欧州で自然エネルギーの電力が拡大する背景には、国際送電網による多国間の電力取引がある。島国のイギリスやアイルランドを含めて、欧州全体で年間に4500億kWhにのぼる大量の電力が国際送電網で送られている。他国との電力取引が活発なデンマークでは、輸出・輸入率が30〜40%に達する。
驚くべきことに、欧州の国際送電網の歴史は100年以上も前に始まっている。1915年に北欧のデンマークとスウェーデンの間に国際連系線が建設されたのを皮切りに、1920年にはフランス・スイス・イタリアを結ぶ国際連系線が稼働した。さらに1950〜60年代になるとドイツからポルトガルまで、そして1980年代には海底ケーブルを通じてイギリスまで国際送電網が広がっていく。
国際送電網の拡大に伴って送電量も増え続け、2015年には欧州全体で約4500億kWh(キロワット時)に達した(図1)。これは日本国内の電力需要(9490億kWh、2015年度)の5割弱に匹敵する膨大な送電量である。特に1990年代に入ってイギリスをはじめ各国で発送電分離(発電・小売事業と送電事業の分離・独立)が進み、国境を越えた広域の電力取引が活発になった。
加えて風力発電を中心に自然エネルギーの電力が欧州全域で増加したことも、国際送電量を拡大させた。早くから風力発電の導入に取り組んできたデンマークでは、天候による発電出力の変動対策として国際送電網を積極的に活用している。既に他国に向けた電力の輸出率は30%を超え、輸入率は40%近くまで上昇した(図2)。欧州全体で見ても輸出入の比率は10%以上に達している。
実際に各国間の電力の潮流を見れば、国境を越えて電力の輸出入が活発に行われている状況が分かる。欧州の国際送電網は地域別に4つの大きなネットワーク(欧州大陸系統、北欧系統、イギリス系統、バルト系統)で構成する。さらに各地域のネットワークを直流送電方式で非同期に接続して、遠く離れた国の間でも広域の電力取引を可能にしている(図3)。
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