では、複合機の省エネ技術はどのようにして発展を遂げたのか。同部会副部会長の川崎利政氏は「(参画企業は)製品を幅広く輸出しているため、各国の省エネ・環境規制への適合が求められており、その規制も2〜3年で更新される。これらへの適合を目指し、複合機の各部を徹底的に見直してきた」と振り返る。
川崎氏は、複合機の電力消費フェーズをSleep(消費電力を抑える休眠状態)、Ready(次の印刷に備える待機状態)、Print(実際の印刷動作)の3段階に分け、それぞれのフェーズで省エネ化を図ったと説明。
複合機の動作でほとんどの時間を占めるSleepフェーズでは、LANコントローラーなど必要最低限の電子回路のみ電源をオンとし、電力消費の大きいCPUなどはSleep時は電源供給をカットすることで、プリンタコントローラーの待機電力を削減した。
また、複合機では定着器のヒーターによってトナーを溶かし、ローラーで加圧することで紙にトナーを定着させる方式が一般的だ。以前の複合機では、素早い印刷を可能とするため、Sleepフェーズに入れるまでの時間を長くして定着器を余熱させて待機するなど、余分な電力消費が発生していた。
現在の複合機では、各社独自の技術によりヒーターの熱容量を低減した。また、短時間でトナー定着温度に達する技術を用い、Readyフェーズの消費電力量低減とPrintフェーズへの移行時間短縮を両立させた。
さらに、印刷品質を維持しつつ低い融点を実現した「低融点トナー」の開発や、エネルギー効率が低いステッピングモーターから高効率なブラシレスDCモーターへの変更、CPUや周辺回路を集積しSoC(System on Chip)化するなど、多くの改善を盛り込むことでPrintフェーズの消費電力量を削減した。
複合機の省エネ化は、電気・化学・機械といった各工学分野の知見を集約した、まさに技術の結晶といえる。川崎氏は「時間当たりの印刷枚数が多い、1枚あたりのコストが安いといったスペック面に注目されやすいが、業界では省エネ化にも熱心に取り組んでいることを知ってもらえれば」と語った。
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