日本ユニシスとユーグレナが、バイオ燃料用ミドリムシの生産性向上に向けた共同研究に着手。IoTやAIなどを技術を活用し、生産管理の効率化や生産量予測を行い、ミドリムシ由来バイオ燃料の実用化に役立てる考えだ。
日本ユニシスとユーグレナ社は2018年8月から、IoTやAIを活用し、バイオ燃料用ミドリムシの生産量予測などを行う共同研究を開始した。同研究では、ユーグレナ社の研究施設である三重県多気町の藻類エネルギー研究所で、バイオ燃料用ミドリムシの生産量の安定化や屋外大量培養における管理コスト削減を目的とした実証実験を行う。日本ユニシスのセンシング基盤「IoTビジネスプラットフォーム」と、AI技術「Rinza」を活用し、生産管理のためのセンシング基盤構築、および天候など変化する環境要因に連動した生産量予測のための増殖シミュレーションモデル構築を目指す。
近年、エネルギーを多様化し安定的に確保していくかが社会課題となっており、持続的再生可能エネルギー源としてバイオ燃料に注目が集まっている。しかし、サトウキビやトウモロコシ、パームなど従来のバイオ燃料の原料は、食料と競合するために食料価値の高騰を招くなどの問題点があった。
ユーグレナ社が研究を進める「ミドリムシ(ユーグレナ)」などの藻類は、これらの問題を克服する新しいバイオ燃料の原料として注目されている。一方、安定かつ低コストで大量培養できる方法を確立させることが大きな課題であり、そのためには、天候などに左右されやすい屋外培養における生産管理と生産予測を実現することが重要となる。
日本ユニシスでは、ユーグレナ社がバイオ燃料用ミドリムシを屋外で大量培養するための課題となる、生産管理と生産量予測について、「IoTビジネスプラットフォーム」と「Rinza」のAI技術を活用した方法で支援する。
Rinzaは、自然言語処理技術、統計解析・将来予測、機械学習や深層学習などのAI関連技術を中心とし、ビジネスエコシステムを構成するパートナーから提供されるクラウドサービスやソフトウェアを取り入れたオープンな技術体系をいう。
同研究では、ハイパースペクトルカメラ(二次元の位置情報を持った画像に加えて、波長の情報を取得することができるカメラ)やセンサー群を活用し、培養プール内の状態を可視化するため、「IoTビジネスプラットフォーム」を活用したセンシング基盤を構築。ミドリムシの成長状況などの生産管理に必要な情報をリアルタイムで把握することが可能となる。
これらの情報を定常的に取得してデータを蓄積し、Rinzaを活用して解析していくことにより、天候など変化する環境要因に連動した藻体生産量予測のための増殖シミュレーションモデル構築を目指す。
ユーグレナ社は、藻類エネルギー研究所で行っている実証実験で日本ユニシスのセンシング基盤を活用することで、天候による生育状況の変化に関する情報や、培養プール内の状態を示す各種センサー群のデータの安定取得を行う。また、従来行っていた担当研究員の定期見回りによるデータ回収と分析、管理に比べ、情報取得から管 理までの工数削減が見込まれることより、運用コストの削減に取り組む。
今回の共同研究を通じ、日本ユニシスは生物におけるセンシング技術、藻体生産予測シミュレーションノウハウの取得を目的とし、その他生物や農業などのセンシング、予測に活用することで、さまざまな社会課題の解決に貢献する考えだ。
また、ユーグレナ社は、生産管理コストの削減によるミドリムシの生産全般に係るコスト低減や生産量の安定化技術を確立することで、ミドリムシなどを用いたバイオ燃料の完成をバックアップする。
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