日揮と産総研らの研究グループが、再生可能エネルギーの電力で製造した水素を原料とするアンモニアの合成と、これを利用した発電に成功した。世界初の成果だという。
日揮および産業技術総合研究所(以下、産総研)などの研究グループは2018年10月、再生可能エネルギーによる水の電気分解で製造した水素を原料とするアンモニアの合成と、そのアンモニアを燃料としたガスタービンによる発電に世界で初めて成功したと発表した。
同グループは、水素のエネルギーキャリアとしてのアンモニアの優位性に基づき、内閣府総合科学技術・イノベーション会議の戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)「エネルギーキャリア」による研究の中で、2014年から「新規アンモニア合成触媒および再生可能エネルギーによる水の電気分解で得られた水素を原料としたアンモニア合成プロセス」の研究開発を進めてきた。
2018年5月には産総研、沼津工業高等専門学校、および日揮子会社の日揮触媒化成と共同で、触媒に使用する担体や触媒の製造方法を改良することにより、低温・低圧下で効率的にアンモニアを合成できる新たなルテニウム触媒の開発に成功した。新たなルテニウム触媒は約400℃かつ5MPa(メガパスカル)の低温・低圧下でのアンモニア合成が可能だ。また、希土類酸化物を担体に用いることが特徴であり、既に工業化されている炭素系担体を用いたルテニウム触媒に比べて安定性に優れている。
同グループは福島県郡山市にある産総研の「福島再生可能エネルギー研究所」の敷地内に建設した同触媒および、一時的な水素供給用に設置した高純度水素ガスボンベを用いてアンモニアを合成する実証試験装置により、実証試験を開始した。
アンモニアの生産能力は1日当たり20kg(キログラム)で、同実証試験を通じて、新たに開発した触媒が低温・低圧で高い活性を有することを確認するとともに、再生可能エネルギーの使用時に課題となる急な運転条件の変更によるアンモニア製造量の変動に対応できることが検証できたという。それを受けて、このほど同グループは実証試験時に使用した高純度水素ガスボンベに替わり、敷地内に設置されている太陽光発電設備で発電した電力による水の電気分解を通じて製造した水素を用いてアンモニアの合成。さらに、合成したアンモニアを燃料に出力47kW(キロワット)のガスタービンによる発電試験を行い、これに成功した。
同グループによる再生可能エネルギーを活用した水素ならびにアンモニアの製造とこれを燃料とした発電は世界で初めてだという。これにより、製造から発電に至るまでCO2を排出しないアンモニアを活用したCO2フリーなエネルギーサプライチェーンの確立に前進したとしている。
今後も同グループは、引き続きアンモニアの合成試験を実施し、再生可能エネルギーを活用したアンモニアの製造コスト低減に向けて研究開発を行う計画だ。
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