ソーラーシェアリングの成功に欠かせない、農作物の選定と設備設計のポイントソーラーシェアリング入門(5)(2/3 ページ)

» 2018年11月05日 07時00分 公開

発電所の設計は、“農作業視点”が重要に

 ソーラーシェアリングは「農地に支柱を立てて営農を継続する太陽光発電」です。そのため、これまでは何も遮るものがなく開けていた田畑に支柱が立つことで、農作業にちょっとした工夫が必要になることがあります。支柱間隔や高さなどを設計する際には、使用する農機具の大きさが当然考慮されているべきものですが、例えば支柱間隔を4メートル程度でとると、小型トラクタが1往復するだけで効率的に耕せる、といった点を考える必要があります。

 発電所に対して、東西南北の全方向からトラクタが進入できることも重要ですが、架台メーカーによってはここを考えないで筋交いを配置してしまうといったことがあります。特に野立て用の太陽光発電向けの架台で、支柱の高さだけを上げたアレイ式の架台では注意が必要です。

 また、小さい農地であるほど基本的にトラクタやコンバインなどは農地の外に出て転回しますから、設備の端と隣地の間にスペースを確保することも忘れてはいけません。他にもトラクタで農地を耕耘(こううん)する際、支柱にどこまで寄せて耕すかは作業する人の腕によりますが、この「耕せないスペース」がどの程度できるかも事前に計算しておきましょう。場合によっては、支柱間だけ人力で除草するといった手間を要することもあります。

トラクタ視点から見たソーラーシェアリングの支柱

太陽光パネルによる日陰のメリット・デメリット

 その他に、夏場の作業で特に実感しますが、太陽光パネルがあることで日陰が生まれますから、人が作業する空間としては暑さが和らいで作業がしやすくなります。体感的には、パネル下だけで作業をしている場合だと、水分摂取量が倍近く変わることもあります。

 太陽光パネルによる日陰が、メリットにもデメリットにもなるのが、影によって地面が乾きづらくなるという点です。特に畑では暑い・雨が少ない時期の乾燥被害を避けることができる一方、雨が多い時期にはなかなか地面が乾かなくなることもあり、作物に湿害などの悪影響が出る場合があります。水田の場合には水の蒸発が抑制される他、水温にも変化があると考えられます。温度については畑の場合も同様で、地温への影響が考えられ、こちらも作物の生育に影響する要因です。

 ソーラーシェアリングの設置によって、こういったさまざまな農地の環境変化があるため、設備設置前とは農作業のやり方がちょっと変わってきますし、それが良くも悪くも作用してくるので、毎年の作業の中で手を替え品を替え取り組みをしていく必要があります。

ソーラーシェアリングの作物生育への影響は?

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