太陽光発電と農業を両立する手法として、近年、国内で大きな期待と注目を集めている「ソーラーシェアリング(営農型太陽光発電)」について解説する本連載。今回はソーラーシェアリングの事業化に際して課題になることが多い「ファイナンス」の手法について解説する。
ソーラーシェアリング(営農型太陽光発電)の事業化に際して、ほぼ必ず質問を受けるのがその資金調達の方法です。「再生可能エネルギーの固定買取価格制度(FIT)」がスタートして以降、数々の太陽光発電事業が立ち上がる中で、ファイナンスの手法も多様化してきました。
個人向けを中心に広まった信販会社によるソーラーローン、発電事業者となる企業の与信力・担保提供能力に依拠する従来型のコーポレートファイナンス、そして大規模なメガソーラーでは発電事業の収益性のみで融資を得るプロジェクトファイナンスなど、これまで不動産やインフラ事業で活用されてきたファイナンス手法が手を替え品を替えて太陽光発電事業に導入されています。では、ソーラーシェアリングの場合はどうでしょうか?
一般的に、ソーラーシェアリングは銀行や信用金庫など市中金融機関からの融資を受けることが難しいと言われてきました。その理由は大きく分けて3つあり、1つはソーラーシェアリングの設置に必要な農地の一時転用許可が3年以内の許可期間を更新する性質のものであること。もう1つは、許可条件の重要事項である設備の下で行われる農業が適切に継続されるかどうかを金融機関が評価できないこと。そして、最後が農地に対する登記可能な権利が限られることです。最初の一時転用許可期間の問題が最も大きなハードルで、3年間の許可更新を繰り返していくとFITによる発電事業期間中だけでも6〜7回の再許可取得が必要となります。
2013年に農林水産省がソーラーシェアリングを制度化した当初、最も融資の事例が多かったのは日本政策金融公庫で、農家が自らソーラーシェアリングを設置するモデルに対して特に融資が行われていました。この事業スキームの場合、農地自体にも抵当権の設定が出来、地上設置型の太陽光発電に近しい担保設定も可能です。また、発電事業者である農家が発電事業にも農業にも責任を負う形になるため、事業の一体性を評価して地方銀行でも融資が可能というケースがあります。
それ以外の、例えば発電事業者と営農者が異なるスキームの場合、発電事業者がコーポレートファイナンスで融資を受けられるだけの与信力や担保提供能力があれば、事業に必要な資金が調達できることもありました。しかし、上に挙げた3つの理由がそれぞれ障害となり、金融機関からの融資による資金調達がうまくいかない事例を私自身も多く目にしてきました。
私がファイナンススキームの構築に携わった「匝瑳メガソーラーシェアリング第1発電所」(千葉県匝瑳市)の事例では、城南信用金庫がプロジェクトファイナンスによる融資を行ったことが大きく報じられました。
このプロジェクトでは、発電事業者としてソーラーシェアリングが立地する地元の企業を中心とした特別目的会社(SPC)を設立し、さらに地元の農業法人がソーラーシェアリング設備の下で耕作を行うという形を取ったことで、地域の農業振興に資するという事業の意義が明確になり、農業の継続性に関するリスクも低いとの判断を得ることができました。そして、半年以上に亘る協議を重ねた結果、プロジェクトファイナンスによる資金調達が可となったのです。
この時に作り上げたさまざまな土地や農業に関する契約モデルは、その後の低圧/高圧規模のソーラーシェアリング実施に際して、1つの標準モデルとなりました。複数の地権者を束ね、地元企業を中心とした発電事業、地元農業法人による営農という複数の主体が絡みながらも、地域の耕作放棄地を再生し農業の活性化を図るという目的の下で事業スキームをまとめ上げ、総額2億2千万円の融資を受けることが出来ました。
千葉エコ・エネルギーの自社保有設備として2018年4月に完成した「千葉市大木戸アグリ・エナジー1号機」(千葉県千葉市)のプロジェクトでは、自らが農業法人としての資格を得て農業も担うというスキームで、同じく城南信用金庫から融資を受けています。
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