深まるSDGsとソーラーシェアリングの関係性、「儲かる」を越えた価値の創出へソーラーシェアリング入門(15)(2/3 ページ)

» 2019年06月03日 07時00分 公開

変わりつつあるソーラーシェアリングへの期待

 2013年3月末に農林水産省からソーラーシェアリングに対する農地の一時転用許可に関する通達が出された際、期待されていたのは、農業者が発電事業に取り組むことによる直接的な所得向上でした。売電による農業者の所得向上によって、営農の継続対するインセンティブを与え、農業後継者や新規就農者がより農業に取り組みやすくなる――これが、ソーラーシェアリングの導入による効果として認識されていたのです。

 さらに農山漁村再生可能エネルギー法において、再生可能エネルギー発電事業による立地地域の農林水産業に対する一定の収益還元が求められるようになる中で、それを先取りあるいは発展させたモデルとして、ソーラーシェアリングによる農業支援・活性化の取り組みが各地で草の根的に行われてきました。

 私が関わっている千葉県匝瑳市(そうさし)飯塚地区の「匝瑳メガソーラーシェアリング」も、地区内に設置されている全ての設備から、設備下で耕作を行う農業法人や地域の村づくり団体に収益還元が行われています。これは、単なる売電収入からの一定額の還元というだけではなく、発電事業者としてこの地域に参画する事業者が、農業などを通じてより主体的に村づくりへと協力するスキームになっている点が特徴的です。

ソーラーシェアリングによって耕作放棄地が再生され、地域への収益還元も進む匝瑳市飯塚地区

 このように、農地の上での太陽光発電から得られる収益を、直接的に地域の農業振興に活用していくことが、ソーラーシェアリングの制度化当初からの特に重要な視点でした。その後、SDGsへの関心が高まる中で、MDGs(ミレニアム開発目標)から続く貧困問題解決への取り組みと、地球環境を保護しつつ人類の豊かさと平和を目指すという方向性を考えた時、自然エネルギーへのシフトが進む現代社会において、自然エネルギーの普及拡大と農地の保全や回復による食料生産の安定を図るソーラーシェアリングには、新たな価値があると評価されつつあります。

 2018年頃から、農林水産省による営農型(太陽光)発電の説明資料においても、「農山漁村において新たな所得機会が生じている」という表現に加えて、「農地は、国民の食料の生産基盤であり、今後とも優良農地を確保していくことが重要。他方、再生可能エネルギー発電設備の設置等の土地需要にも適切に対応することも必要」という表現が用いられるようになりました。

 また、同じく2018年に策定された第5次環境基本計画では、「営農型太陽光発電の推進」として「営農しながら上部空間で太陽光発電を行う営農型太陽光発電の取組が各地で始まりつつある。その促進により、農業者の経営安定化、農業施設、蓄電池等、農業機械を組み合わせた再生可能エネルギー電気の自家利用等、地域の活性化とエネルギー収支の改善に貢献する。」(第五次環境基本計画 p.35)としており、ソーラーシェアリングによる農業部門のエネルギー転換や地域に根ざしたエネルギー事業という視点が、政策側にも評価され始めたことが読み取れます。

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