最新データで読み解く「ソーラーシェアリングの今」【トラブル・作物・都道府県別状況編】ソーラーシェアリング入門(30)(2/3 ページ)

» 2020年04月14日 07時00分 公開

6.ソーラーシェアリングで栽培されている作物

 ソーラーシェアリングの下で栽培されている作物については、一昨年に千葉大学と共同で実施した農業委員会の全国調査でもまとまったデータが得られていましたが、今回はそれをある程度裏付けるような内容です。

営農型発電設備の下部農地で栽培されている作物 出典:農林水産省

 ざっくりとデータの内容を言い表すと、太陽光パネルの下という環境のイメージの通り、陰性・半陰性の作物が過半を占めています。しかし、作物の生育は日射量・光飽和点だけに依存するわけではなく、遮光率が高くても採光を意識した架台設計かどうかなどの要素で設備下の環境が変化します。そのため、半陰性や陰性作物がどうという分類はそれほど大きな意味を持ちません。とは言え農業の知識が少なく、付け焼き刃でソーラーシェアリングに取り組む事業者の中では、発電事業のための農業を計画することから、半陰性・陰性作物かどうかというだけの視点で作物選定が行われてきた結果として、今回の調査結果のデータになったのだというのが第一印象です。

 円グラフに描かれている作物を見ると、おおよそ一般消費者である私たちが手にしないような作物や、そんなに高い頻度で購入しないようなものが並んでいます。意外だった点としては、しいたけ・きくらげや牧草はもう少し多い印象でしたが、各々全体の4〜5%にとどまっています。後は、みょうがが品種単独で11%を占めているのは、さもありなんという印象です。

 このデータも件数だけで記載されているので、例えば低圧分割や分譲のソーラーシェアリングで、デベロッパーが前例のある同一作物でまとまった数を申請している事例が含まれると、そこで件数だけが積み重なっていきます。一方で、高圧や特別高圧の事業が増えてきていることも考えれば、作付け面積や生産量で評価しなければ実態を反映することは出来ないでしょうし、データを見る側に誤った印象を与えてしまいます。場合によっては、ソーラーシェアリングの許認可権を持つ地方自治体による政策判断が誤ってしまうこともあるでしょうから、作物についてもより精緻なデータの公開が望まれます。

7.10年ルールの対象となる事例数

 2018年5月から施行された一時転用許可期間の10年ルールについても、該当する事例数が公開されました。よく聞かれるのでここでも書いておきますが、当初3年以内の許可期間でスタートした事業であっても、再許可を取得する際にこの10年ルールの基準を満たしていれば、新たな許可期間は10年以内となります。それもあって、平成25年度まで遡ったデータが公表されているのでしょう。面白い結果だと思ったのが、許可件数全体の42%が何らかの形で10年ルールの要件を満たしているということです。これだけ要件を満たしている事例が多いのであれば、現行の10年ルールの要件はそれほど厳しいものではないと言えます。

営農型太陽光発電設備の取り扱いの見直し 出典:農林水産省

 単年度で見てみると、平成30年度はこのルールがスタートした年なので、それを目指した事業が多くなった可能性があります。とは言え、いきなり適した土地は見つからないでしょうから、担い手が営農者になるような形を取ることで要件を満たすことになり、その通りに147件と大きく伸びています。それ以外の年度は、意図してこの条件の充足を目指した事業ではないことから考えると、ある意味で「たまたま満たした」ということが言えます。また、荒廃農地が平成26年度や平成27年度に多いことなどから、FIT制度で太陽光発電が盛り上がる中で、高FIT単価を背景に農地の再生にソーラーシェアリングを活用しようとした事例が増えたのではないかとも推測されます。

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