最新データで読み解く「ソーラーシェアリングの今」【トラブル・作物・都道府県別状況編】ソーラーシェアリング入門(30)(1/3 ページ)

太陽光発電と農業を両立する手法として、近年大きな期待と注目を集めている「ソーラーシェアリング(営農型太陽光発電)」について解説する本連載。今回は農林水産省が2020年3月に発表した最新のデータから「ソーラーシェアリングの今」を読み解きます。後編となる本稿では、営農におけるトラブルや栽培されている作物、一時転用許可期間「10年ルール」の動向や、都道府県別の導入数などのデータを読み解きます。

» 2020年04月14日 07時00分 公開

 前編では2020年3月に農林水産省が発表したソーラーシェアリング(営農型太陽光発電)に関する統計情報から、導入件数や運営事業者、営農状況など関するデータについて解説しました。後編となる今回は、営農におけるトラブルや栽培されている作物、一時転用許可期間「10年ルール」の動向や、都道府県別の導入数などのデータを読み解きます。

5.営農に支障がある事例の割合

 ソーラーシェアリングに取り組んでいる、あるいは取り組もうとする方々が一番気になるのが、事業の中でどのようなトラブルが発生し得るのか、特に農作物の収穫量はどの程度変化するのかではないでしょうか。私もコンサルや講演の際に非常によく聞かれるテーマなのですが、今回農林水産省がこの点についてもデータを公開しました。

 まず、許可件数全体で営農への支障を抱えている事例が208件あり、その内訳として営農者に起因した単収減少が過半数を占め、次いで設置工事の遅延、災害等による単収減少と続いています。ここ何年も台風や豪雨災害が全国的に相次いでおり、長雨も少雨もあって災害等に起因する単収減少が一定数存在するのは致し方ないことです。では、営農者に起因する単収の減少とは何なのでしょうか。

営農型発電設備の下部農地での営農に支障がある割合 出典:農林水産省

 円グラフの下には、「営農者の栽培管理等が不適当であったことにより」と書かれていますが、これだけでは詳しい内容が分かりません。例えば、遮光率が作物に対して過剰に高い設計であったり、農作業の効率が低下するような支柱間隔だったりといった、設備側に起因する事情による生産量の減少も考えられます。他にも、事業計画の都合で高遮光率のソーラーシェアリングとするために、営農者の栽培経験がない作物を選定する事例も多々ありますから、その場合には技術不足も理由になり得るでしょう。

 設置工事の遅延についても、さまざまな理由によって工事が遅れてしまい、種まきなどの適期を逃してしまうことはあり得ます。一方で、設備の完成売りや権利売りを目指している事業者が、とりあえず一時転用許可だけを取得し、その後の販売が上手くいかず工事が進まないという事例も、ここに含まれている可能性があります。

 このように背景としてさまざまな理由が考えられるため、今回のデータだけでは、具体的にどのような状況で営農への支障が発生しているのかが判断できず、その対策を考える情報としても不十分な内容です。単にソーラーシェアリングに対する知見の不足によって引き起こされているのか、発電事業側の都合によるものなのかは、詳細な分析が必要でしょう。

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