最後に、都道府県別の許可件数データです。下のグラフを見て真っ先に気付いて驚いたのは、関東地方に新規許可件数が大きく偏っていることです。平成30年度は全体の70%が関東地方に集中しており、特に茨城県・埼玉県・静岡県の増加率が際立ちます。一方で、事例が累計含めて0なのは前年度から変わらず富山県のみ、そして北海道・東京都・富山県・大阪府・鳥取県・高知県・宮崎県では残念ながら新規許可が0件、他に新規許可が1〜3件に留まる都道府県も多数見られます。
西日本では10件以上増えた地域は愛知県・兵庫県・香川県のみとなっていて、「東高西低」の傾向がより顕著になっていますが、それでも関東への集中は驚きです。事業用太陽光発電全体の事業計画認定ベースで見た時に、西日本で100万kWを超えて全国上位に入るのが愛知県・三重県・兵庫県・岡山県・福岡県・熊本県・鹿児島県なのですが、いずれもソーラーシェアリングは低迷しています。
この傾向をどう分析するかが悩ましいところですが、大きく理由をまとめると、市町村の農業委員会や都道府県の農政部局のソーラーシェアリングに対する姿勢、そしてソーラーシェアリング事業を熱心に手がける事業者がいるかどうかに分かれるのではと思います。平成29年度(2017年度)からソーラーシェアリングへの関心が全国的に高まり始め、私も年間50件を超える講演・セミナーを行っていましたが、取り組もうという方々がいる地域で共通して聞かれたのは、「地元の役場が前向きではない」という話でした。かつて、主に行政サイドの姿勢の理由で「ソーラーシェアリング不毛の地」と言われた埼玉県が、今回の統計では許可件数が全国6位、新規許可件数は全国2位となるといった変化も生まれていますが、どうやら例外的な傾向のようです。
また、ソーラーシェアリングに熱心な事業者の有無は大きな要素で、1つの事業者が1年で10〜20案件以上を手がけることも珍しくなく、千葉エコ・エネルギーとしても2018年度は40〜50案件以上に関わりました。このあたりの経験から、コンサルやEPCを含めた事業者が地域にいるかどうかというのは、単年度の件数が現在の水準に留まる中では大きな影響を与えると考えられます。また、系統連系の厳しさも理由として考えましたが、この時期はまだコネクト&マネージなどの取り組みが緒に就いたばかりだったので、あまり大きな要素ではないように思います。
今回公表されたデータはこれまでにない多様さとなっており、各項目でも言及したとおり別の切り口のデータがなければ詳細な分析ができないものもあるため、この記事だけでは到底現状を説明しきれない内容です。ソーラーシェアリングの普及が始まってから丸6年の情報が蓄積されてきていますから、こうしたデータを精緻に分析することで普及拡大に向けた解決すべき課題や、既存の事業が抱えているあるいは今後向き合うことになる問題を事前に洗い出し、解決策を準備しておくことも出来ます。
ソーラーシェアリングの更なる普及拡大と既存事業の適正化のために、不足しているデータを確認しつつ、今後の講演や論文などでまた詳しく解説する機会を設けていきたいと思います。
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