太陽光の“明暗分かれた”2020年度のFIT価格、ソーラーシェアリングへの影響は?ソーラーシェアリング入門(28)(1/2 ページ)

太陽光発電と農業を両立する手法として、近年大きな期待と注目を集めている「ソーラーシェアリング(営農型太陽光発電)」について解説する本連載。今回は経産省が2020年3月に発表した2020年度のFIT価格と、ソーラーシェアリング市場への影響について考察します。

» 2020年04月06日 07時00分 公開

 2020年で通算8回目になる、年度末恒例となったFIT制度の調達価格決定の時期が訪れました。2月4日に開催された調達価格等算定委員会の第55回会合で、2020年度の調達価格についての委員会意見がまとまり、その後にパブリックコメントが始まって3月7日に終了しました。

 そこから待たされること2週間少々、3月23日に経済産業省が「再生可能エネルギーの固定価格買取制度(FIT制度)における2020年度の買取価格・賦課金単価等」を公表したことで、今年度も一連の儀式が終わりました。今回は太陽光発電に対する制度の変更が相次いだことで業界としても議論の経過が注目されており、内容が確定したことでやっと来年度の見通しが立てられます。

 過去を振り返ると、基本的にFIT制度に関するパブリックコメントは儀式的なものと言え、ここで何らかの変更がかかるようなことはほとんどありません。もし調達価格や区分の変更となれば、年度末の時期に調達価格等算定委員会を臨時開催ということにもなりかねず、そんな手間をかけてまで追加の修正を行うことは考えられないからです。とは言え、確定するまでは何があるか分からないのが日本のFIT制度ですから、私も正式発表があるまでは何が起きるかとあれこれ考えながら、見守っていました。

2020年度は大きな分岐点に

 3月23日に公表された資料から、太陽光発電の調達価格は以下のようになりました。

「1.」の住宅用太陽光発電の一本化や、「4.」の事業用太陽光発電の入札範囲拡大、そして何より「2.」の低圧規模の事業用太陽光発電における「自家消費型の地域活用要件」が、最も業界への影響が大きいだろう変更点です。

2020年度の太陽光発電の調達価格一覧(出典:経済産業省) 

 調達価格の変更点だけを見ると、まず住宅用太陽光発電はこれまで「出力制御対応機器設置義務あり」と分類されていた枠が、26円から21円に大きく下がることになったのが特徴的です。

 事業用太陽光発電の方は、10kW以上50kW未満(低圧規模)で14円/kWhから13円/kWh(約7%引き下げ)に、50kW以上250kW未満で14円/kWhから12円/kWh(約14%引き下げ)と、金額では1〜2円と小幅な減少のように一見感じられます。しかし、14円から12円への引き下げは、40円から36円(10%引き下げ)になったときよりも比率的には大きくなります。事前の各所の予想よりは小幅という声も耳にしますが、比率で見た場合の影響は相変わらずという結果でした。低圧規模は1円/kWhの引き下げでしたが、こちらは基本的に自家消費比率30%(調達価格の算定上は50%)の事業を前提としている点に注意が必要です。

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