リチウムイオン電池の高性能化へ前進、アルミ負極の劣化抑制を可能に蓄電・発電機器

東北大学と住友大学が、リチウムイオン電池の高性能化につながるアルミニウム負極の実用化課題であった体積膨張を制御する手法を開発。電池の高容量化や軽量化、低価格化などへの貢献も期待できる成果だという。

» 2020年04月28日 07時00分 公開
[スマートジャパン]

 東北大学と住友化学は2020年4月、リチウムイオン電池用のアルミニウム負極について、充放電時の体積膨縮を高純度アルミニウム箔の使用により制御できることを見いだし、その機構を解明したと発表した。リチウムイオン電池の高性能化につながる成果だという。

 リチウムイオン二次電池は、正極、負極、電解質およびセパレータの主要4部材から構成されており、リチウムイオンが正極と負極間を移動することで充放電が行われ、負極は、充電時に正極から移動してきたリチウムイオンを取り込む役割を果たす。現在の負極は炭素系材料が主流だが、電池のさらなる高容量化のために、炭素系材料に比べて3〜10倍のエネルギーを蓄えられるシリコンの他、スズやアルミニウムなどの金属系材料の使用も検討されている。

 しかし、それらの材料は、多くのリチウムイオンを取り込み大きなエネルギーを蓄えられる反面、充放電時に2〜4倍も膨縮するため内部の電極構造が崩れやすい点が実用化の課題となっていた。

 今回研究グループは高純度アルミ箔の硬さを最適化することで、体積膨縮の制御が可能となることを明らかにした。さらに従来の負極ではリチウムイオンを蓄える炭素系材料部分と、電流を集めつつ基材の機能も果たす銅箔を積層した構造をとる必要があったが、高純度アルミ箔ではこれらを単体で両立することができるという。

 高純度アルミ箔の硬さを最適化すると箔全面にリチウムイオンが受け入れられ、アルミとリチウムの金属間化合物が均一に形成される。金属間化合物は比率が1:1でない場合でも形成される特性があるため、表面と箔深部で濃度勾配ができる。これにより、深部のアルミが一様に押し上げられ、厚み方向にのみ体積膨張し充電される。底部は電流を集める層として機能する。

 放電時は表面からリチウムイオンが放出されるが、そのさいに次の充電時に効率的にリチウムイオンが受け入れられるような、多くの孔が開いた構造が形成される。底部は電極構造を維持し、銅箔の代替部分となるため、高純度アルミのみで一体型負極として利用できるようになる。

研究グループが解明した機構のイメージ 出典:住友化学

 研究グループは、一体型アルミニウム負極の実現によ従来のリチウムイオン二次電池に比べて、電池製造のプロセスを大幅に簡素化できることから、製造工程における環境負荷の低減とともに、高容量化や軽量化、低価格化なども期待できるとしている。また、次世代電池として注目される全固体電池にも今回の成果を適用できる可能性があるとして、今後も共同研究開発を進めるとしている。

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