ニュース
» 2020年06月11日 07時00分 公開

ソーラーシェアリング入門(31):農村特有の災害リスクやBCPに貢献する――「EV×ソーラーシェアリング」の可能性 (1/2)

「ソーラーシェアリング(営農型太陽光発電)」について解説する本連載。今回は農村などにおける持続可能なBCP対策として新たにスタートした、ソーラーシェアリングとEV(電気自動車)を組み合わせた実証実験について紹介します。

[馬上丈司 千葉エコ・エネルギー株式会社 代表取締役,スマートジャパン]

 4月以降の本連載では、番外編として新型コロナウイルスによる社会変化について考察してきました。その中で、今後新たな生活様式によって柔軟な働き方が実現することで、「郊外の農村地域に人の移動が始まるのではないか」という仮説を立てました。

 大都市に居住することの生活・生存リスクの視点は、台風や地震といった自然災害でこれまでも意識され来たように思います。では郊外の農村だと、そのリスクをどれだけ回避することができるのでしょうか。

 2019年9月の令和元年台風15号による千葉県を中心とした大規模停電の被害と、ソーラーシェアリングの安全確保については以前本連載で取り上げました。当時、私たちが運営するソーラーシェアリング設備の千葉市大木戸アグリ・エナジー1号機では、台風の暴風による直接的な設備への被害はなかったものの、周辺道路の全てで倒木が発生したことで配電線が破壊され、停電の復旧まで8日間を要するという影響がありました。

令和元年台風15号の暴風により多数の倒木で配電線に被害

 この時の経験を経て、農村の持つ再生可能エネルギーのポテンシャルを、FIT制度を利用しないケースでも引き出せるようにしなければ――と、改めて考えるようになり、新たに千葉エコ・エネルギーとして「ソーラーシェアリング×EVモビリティ都市近郊農村の低炭素化&農村BCP構築プロジェクト」をスタートさせています。今回は、その背景と概要を紹介していきます。

農村特有の災害リスクにどう備えるか?

 令和元年台風15号による大停電の際、ソーラーシェアリングは健全性を保ったものの配電線の損傷によって電力の供給はできず、またFIT制度上の制約から蓄電池の併設による非常時の給電システム構築も出来なかったため、膨大な電力を作る能力がありながらも、それを全く生かすことが出来ませんでした。

 また、夏場の長期間の停電に際して、自動車がエアコンを稼働させての暑さからの避難場所となったり、スマートフォンなどの充電や家電の電源として活用されたりしましたが、以前からのガソリンスタンドの減少や、流通の停滞と災害時需要の増加によって燃料の確保が困難になるという事態も発生しています。

実証で利用するトヨタの超小型EV「コムス」

 実際に私たちの農場がある千葉市緑区大木戸町一帯では、倒木が多発したことで道路がふさがれ、ガソリンスタンドにたどり着くことすら困難な状況が続いて地元の方々は大変な苦労をしたと聞いています。今回の大停電では都市部から離れた農山漁村で停電が長期化し、台風の通過から7日後でも10万件で停電が続き、ほぼ100%が復旧したのは16日後でした。

 この時、千葉県内ではトヨタ自動車のプリウスPHVや日産のリーフといったEV/PHVが停電地域での電源車として活躍していました。EV/PHVは走る蓄電池となることが実証されたことで、そこに各地で分散設置されたソーラーシェアリングから給電できれば、農村のBCP対策につながるのではないか――そう考えたのが、「ソーラーシェアリング×EVモビリティ都市近郊農村の低炭素化&農村BCP構築プロジェクト」の始まりです。

       1|2 次のページへ

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.