農村特有の災害リスクやBCPに貢献する――「EV×ソーラーシェアリング」の可能性ソーラーシェアリング入門(31)(2/2 ページ)

» 2020年06月11日 07時00分 公開
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ソーラーシェアリングからEVに給電、FITとの兼ね合いも課題に

 以前から、千葉市大木戸アグリ・エナジー1号機では「アグリ・エナジープロジェクト」として農業の低炭素化の実現を目指してきましたが、農業機械では電化されている機種が少ないのが悩みでした。しかし、トラクターやコンバインのみならず、農業には軽トラックなどモビリティの存在が欠かせません。

 これらのモビリティにEVを採用すれば、普段はソーラーシェアリングの電気で充電して農作業などに活用しつつ、災害時には走る蓄電池として非常用電源に、さらには日常の家庭用電源まで賄えれば、理想的な農村地域での地域エネルギー自給が達成できます。そして、農地に設置できるソーラーシェアリングは導入場所の制約が少なく、農業生産基盤を損なわずに再生可能エネルギーを増やすことが出来ます。このソーラーシェアリングとEVを組み合わせを実証していくことが今回の一つの目標です。

 ただ、FIT制度の制約があり既存のソーラーシェアリング設備を改修して電源として使うことは容易ではありません。そこで手始めに、農業用ハウスの上に小規模な太陽光パネルを取り付け、蓄電池と組み合わせてEVや新たに導入する電動農機具に給電できる設備を整えました。EVは最初にトヨタ車体の超小型EV「コムス」を導入し、日常的な作業や移動の中でのEV運用に慣れていきながら、段階的にPHVなども投入していく予定です。

ハウス上の太陽光パネルから蓄電池を通して給電
新たに電動農機具も導入

 まずは、大木戸での日頃の農作業でこういった機器の使い勝手や、運用コストのデータを取得していき、既存の機器でも十分に対応できるのか、あるいはどんな改良・新製品の開発が必要なのかを検証していきます。その上で、ブラッシュアップしたモデルをパッケージ化して、全国への水平展開を目指すプランです。

 ソーラーシェアリングの地域電源としての活用を考えるなかでは、まだまだFITを使わないモデルでの電気事業が収益面で成り立ちにくかったり、制度の壁が立ちはだかったりすることで水平展開できるモデル作りが遅れていました。今回、モビリティを新たに要素として加えたことで、これを打破することが出来ればと考えています。引き続き、本連載中で事業の経過もお伝えしていきます。

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