「ソーラーシェアリング(営農型太陽光発電)」について解説する本連載。今回も引き続き新型コロナを受けての番外編として、エネルギーに加え、食料や居住の在り方といった複数の観点から、アフターコロナの時代に求められる「持続可能な社会」について考えます。
前回は、これからの社会で新型コロナウイルス感染症のような新興感染症による脅威が繰り返される可能性があり、それに備えた社会作りをしていく必要があることに言及しました。その方向性とモデルについて、今回はより具体的に考えていきます。
全世界で同時に感染症の蔓延が発生し、現在と同様かそれ以上の社会経済活動の縮小が続いた場合に、エネルギー資源や食料の国外からの輸入が縮小・途絶する可能性があります。また、国内での蔓延がヨーロッパでのコロナウイルス拡大と同様の規模に及ぶことがあった場合、国内の物流が停滞することによる食料供給の停滞や、大規模な火力発電所などエネルギープラントの運転停止あるいは燃料不足による供給量の低下も想定されます。
そのような状況が発生すると、地域別で見てエネルギーや食料自給率の低い大都市では、生活に必要な資源の確保すら支障をきたす可能性があります。今回のコロナウイルス蔓延は、今のところは国内の電力需要が最も少なくなる春に発生したこともあって、電力供給は余剰傾向にあります。しかし、これが電力需給の逼迫(ひっぱく)しやすい真夏や真冬だった場合、供給余力の減少が深刻な問題をもたらすことにもなりかねません。
こうした非常時に備えた社会を作っていくためには、私たちの生活をアフターコロナの社会でどのように変えていくことが必要なのでしょうか。国外からの資源供給が不安定になるというリスクに対しては、エネルギーや食料の自給率を高めていくことが必須です。今回はまだ影響がそれほど顕在化していませんが、非常時にはどの国も自国のためのエネルギーと食料確保を優先すると考えられ、もし新型コロナウイルスの感染拡大がふたたび繰り返された場合に、具体的にどのような影響が出てくるかは想像がつきません。
また、食料の場合は生産体制の問題も生じます。既にメディアで繰り返し報じられていますが、日本の農業を支えている重要な人材には外国人技能実習生が居ます。厚生労働省による外国人雇用状況の統計資料を見ると、2018年の農業分野における外国人労働者数は31,072人で、そのうち約2万8000人が外国人技能実習生です。この技能実習生がコロナウイルス対策の影響で日本に入国できなくなり、収穫期を迎える野菜の出荷への影響が懸念されています。農林水産省は、臨時の採用支援に向けた補助制度を設けましたが、国内の人材確保が課題だと言えます。
国全体としてエネルギーと食料の自給体制を整え、かつそれを社会経済活動が停滞した状況でも人々に最低限供給できる状態を作ることが必要です。そのためにまず挙げられるのが、大都市からの人の分散ではないでしょうか。「一気に東京や大阪などの首都圏から日本中に分散せよ」という変化ではなく、まずファーストステップとして、どうあがいても資源の自給が難しい大都市部からその外周部に少しずつ分散するというイメージです。
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