新型コロナで感じた現代社会のリスク、エネルギー以外も「分散の時代」へソーラーシェアリング入門〜番外編その4〜(2/2 ページ)

» 2020年06月01日 07時00分 公開
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エネルギーだけじゃない「分散社会」でリスクに備える

 これまで都市部への人口集中を加速させてきた要因の一つには、「原則全員がオフィスに通勤する」という働き方が挙げられるでしょう。しかし、今回の新型コロナウイルス蔓延に際して、テレワークによるオフィスへの出社機会削減が推奨され、首都圏では東京への通勤者が段階的に減少しました。こうしたテレワークの拡大は、毎日オフィスに通うことが負担となる場所、つまりは郊外や首都圏の周縁部などに居住していても、大都市に本拠を置く企業に勤めることを可能にします。

 新型コロナウイルスによる経済活動の縮小は、個人が一つの仕事・企業だけで稼ぎを得ることのリスクも明らかにしました。そこで、次は仕事の分散が必要になります。いくつもの仕事を持つ「複業」が注目されて久しいですが、その選択肢の一つに農業がなり得ることは、以前の記事で触れた通りです。

 しかし、農業を仕事にするといっても大都市圏から遠く地方に離れる必要はありません。東京を中心に見ても、東京・千葉・神奈川・埼玉で約22.5万ha(ヘクタール)、関東1都6県では約58万haの農地がありますから、そのポテンシャルは膨大です。

千葉市内にある東京駅から1時間の農村風景

 そうして人の分散と仕事の分散を進めた上で、エネルギーについては地域分散型の再生可能エネルギー、特に燃料の確保が課題とならないようなエネルギー源を多く導入しておく必要があります。オフグリッドでも使いやすく日当たり以外の条件を選ばない太陽光発電と太陽熱利用、そしてある程度資源の蓄積が可能な木質バイオマス熱や、農業に関連したバイオガスの活用も考えられます。これらのエネルギー資源の活用は、非常時にも確実にエネルギーを手に入れられるというだけでなく、平常時もエネルギーコストが地域に留まることで所得の増加に貢献します。

 先述した約58万haある関東の農地の1割にソーラーシェアリングを導入した場合、約1300万世帯分の年間使用電力量相当の電力が生産できます。これを各地に分散させておき、蓄電池やEVなどで柔軟に非常時も含めて活用するシステムが入れば、エネルギー供給の強靱化が図れることになります。ちなみに、この生産した電気を各地域の家庭で消費していくと、経済産業省が家庭用電気の自家消費分の便益としている26.33円/kWhで換算した場合、年間1兆4000億円分の価値が生まれます。これだけの価値が、ソーラーシェアリングの設置された各地域に分配される所得を増やすことになります。

 このように、都心を離れた場所でエネルギーと食料の自給を図り、複業によってさまざまな社会変化にも耐えられる収入を確保できる生活を目指す形が、アフターコロナの社会における一つのライフスタイルとして提案されるのではと考えています。どんな状況でも生きるための最低限の資源確保ができ、その上で豊かな生活を積み上げていくための環境は整いつつあり、後は人々の意識と行動がそちらに向かえば、その変化は一気に進むだろうと思います。

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