大きな被害をもたらした台風災害、ソーラーシェアリングの安全対策はどうすべきかソーラーシェアリング入門(21)(1/2 ページ)

太陽光発電と農業を両立する手法として、近年大きな期待と注目を集めている「ソーラーシェアリング(営農型太陽光発電)」について解説する本連載。今回はこの夏から秋にかけて日本に大きな被害をもたらした台風災害から、ソーラーシェアリングの安全対策について考えます。

» 2019年11月11日 07時00分 公開

 2019年は昨年に引き続き、台風による災害が多い年となりました。私が住む千葉県は、9月9日に上陸した台風15号、10月12日の台風19号、そして10月25日の台風21号に関連した豪雨に見舞われ、甚大な被害を受けることになりました。

 気候変動(Climate change)が深化したことによる気候危機(Climate crisis)への対応が緊急の課題となる中で、自然資源からエネルギーを得る再生可能エネルギー事業も、自然の恵みである農業も、激化する自然災害と向き合う大きな転換点に差し掛かっています。今回は、そのような変化の中でソーラーシェアリング(営農型太陽光発電)事業の健全性を保って長期持続的なものにしていくためには、何をすべきなのかを考えていきたいと思います。

大きな被害をもたらした台風15号

 台風15号では、千葉県を含む南関東を中心に猛烈な風が吹き荒れ、台風が上陸した千葉市では気象庁の千葉測候所が最大瞬間風速57.5m/s(メートル毎秒)を観測しています。この風によってソーラーシェアリングの直接・間接的な被害も相次ぎ、台風が過ぎ去った後には、私のところにも設備の修繕や再建の相談が何件も持ち込まれました。

 直接的な被害では、風による架台の全半壊、モジュールの破損、架台のズレなどが見られ、間接的な被害は飛来物による設備の損傷がほとんどです。また、千葉県内を中心に大規模な停電が長期間続いたことによる電力供給停止も、発電事業や農業の再開に大きな影響がありました。

倒木によって破壊された千葉市内の配電線

 ソーラーシェアリングは2016年頃から本格的な普及期に入りましたが、台風で直接の被害を受けたところは、初期に多く見られた単管パイプによるものだけでなく、比較的新しく建てられた設備も多い傾向がありました。ソーラーシェアリングの普及当初は、発電事業の事業性よりも農業振興に魅力を感じて取り組む方が多く、自ら設備を手がけることで単管パイプ等による簡易なものでありつつも、適宜メンテナンスや補強に知恵を絞ることで、台風など自然災害にも対応できています。実際に、台風の接近が判明した段階で補強対策を取って、被害を免れたという話を何件も耳にしました。

 一方で、普及期になるとさまざまな思惑での事業参入が増え、メーカーや施工業者も流行に乗るかたちで事業や製品を勧めるため、結果として玉石混交の設備が次々と生まれます。私も日々事業化支援を手掛けていますが、長年の経験で蓄えた知見と実績に基づいた事業化の提案も「あっちの方が安いから」という理由で断られてしまうことが、2018年頃から増えた実感があります。

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