大きな被害をもたらした台風災害、ソーラーシェアリングの安全対策はどうすべきかソーラーシェアリング入門(21)(2/2 ページ)

» 2019年11月11日 07時00分 公開
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ソーラーシェアリングの安全確保に必要な視点

 しかし、初期投資が抑えられても、ソーラーシェアリングは長期にわたって発電事業と農業を両立させる取り組みですから、長きにわたる事業期間中のことまで考えたサポートを受けられることが必須です。例えば、猛烈な台風が来そうだからと補強対策の相談を投げかけた時に、適切に応じられる施工会社やメーカーであるかも、判断材料にして欲しいと思います。火災保険によって台風の被害が補償されるとしても、周辺の農地にも影響がおよんだり、ましてや人的被害が出たりすることになれば金銭の問題だけに留まらなくなりますから、可能な限り被害を予防することが大切です。

台風15号の直撃から8時間後の千葉市大木戸アグリ・エナジー1号機

 今回の台風15号で吹き荒れた暴風は、各地で太陽光発電やそれ以外の再生可能エネルギー発電設備に大きな被害をもたらすほどの強さでしたが、幸いなことに私たちが手掛けた設備では直接の被害はありませんでした。しかし、今後は気候変動の影響による台風のさらなる大型化も予想されるため、既存の設備の補強方法や、より強度の高い新型設計の架台・基礎構造を投入していくことを考えています。

 ちょうどNEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)が2019年度からスタートさせた、営農型太陽光発電の設計・施工ガイドライン策定WGに委員として参加することになり、私たちがこれまで培ってきた経験を今後策定されるガイドラインにも反映していくつもりです。ただ、ガイドラインは新設される設備に適用されるものですから、既に事業を行っている設備への補強・改修対策はまた別途の手を打つことになります。

 台風15号に続く19号や21号では水害が多発しましたが、各都道府県や市町村が作成・公表しているハザードマップに予想されていた範囲だけでなく、それを超える範囲での被害も発生しています。既にこれまでの想定を上回るところまで自然災害の猛威が迫る中で、行政だけの情報に限らず、事前にそのリスクを評価し備えることがより重要になってきたことを痛感する出来事でした。

ハザードマップの想定を大きく超える浸水被害となった茂原市役所周辺

 ソーラーシェアリングによる太陽光発電事業も農業も、社会のエネルギーと食を担う超長期の事業です。今回、台風による暴風と豪雨による災害を実体験し、30年や40年と続いていく先も見据えた備えと対策を進めていくことの重要性を、改めて考えるきっかけにしたいと思います。

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