発電事業ありきは本末転倒、ソーラーシェアリングの普及に必要な営農者の視点ソーラーシェアリング入門(20)(1/2 ページ)

太陽光発電と農業を両立する手法として、近年大きな期待と注目を集めている「ソーラーシェアリング(営農型太陽光発電)」について解説する本連載。今回は2019年9月に開催された「全国ソーラーシェアリングサミット2019 in 柏」を通じて見えた、日本のソーラーシェアリングの課題と今後の展望について考察します。

» 2019年10月21日 07時00分 公開

 去る2019年9月7日に、千葉県柏市で「全国ソーラーシェアリングサミット2019 in 柏」が開催されました。今年で4回目となるソーラーシェアリングサミットでは、開催地での取組事例の視察や報告、参加者によるパネル展示などさまざまなコンテンツが盛り込まれています。

 今回は、エクスカーションとして同年8月に千葉市大木戸アグリ・エナジー1号機の視察も行われ、市役所職員・農業者・大学関係者を始めとする参加者を受け入れました。今年のソーラーシェアリングサミットも全国から70名近い参加者を得ての開催となり、専門家や実践者による多様な報告も行われ、私もトークセッションのモデレーターを担当しました。今回は、ソーラーシェアリングサミットを通じて見えた、ソーラーシェアリングの課題と今後の展望について取り上げます。

千葉市大木戸アグリ・エナジー1号機の視察

ソーラーシェアリングへの懸念と期待

 今年のソーラーシェアリングサミットは、冒頭に開催地である柏市の秋山浩保市長による挨拶の後、午前中の有識者による2つの基調講演と、午後の2つのトークセッションによって構成されました。千葉県はソーラーシェアリングの事例件数が全国最多ではあるものの、開催地の柏市にはまだソーラーシェアリングの事例はなく、各地の先進事例に学びつつ地元でのソーラーシェアリング導入をどのように図れるかという視点が、サミットの1つのテーマだったと言えるでしょう。そのテーマを通じて、全国的にも約2000件程度の事例がありつつ、一層のソーラーシェアリング普及のために、どのような手段を講じるべきかを考える場であったと思います。

 基調講演は、エネルギーから経済を考える経営者ネットワーク会議の代表理事である鈴木悌介氏と、弊社(千葉エコ・エネルギー)とともに全国の農業委員会に対するソーラーシェアリングの実態調査を行った、千葉大学人文公共学府の倉阪秀史教授が登壇しました。特に倉阪教授のプレゼンテーションは参加者の注目が高く、全国の農業委員会からのソーラーシェアリングに対する意見をまとめた調査データは、現場の生の声が強く反映されたものになっていました。

千葉大学の倉阪秀史教授による基調講演

 農業委員会に所属する方の意見では、ソーラーシェアリングに対して否定的な見解が多く見られ、許認可手続きの煩雑さや農業よりも発電事業が優先される実態、作物の効率的な生産に対する懸念などが挙げられています。一方の肯定的な意見では、耕作放棄地の解消への期待や、農業者の所得向上による後継者・就農者の増加、支柱などを生かした農業などへの期待が記されていました。

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