日本のエネルギー政策に転機の兆し、再エネ・ソーラーシェアリングはどうなるのかソーラーシェアリング入門(34)(1/3 ページ)

「ソーラーシェアリング(営農型太陽光発電)」について解説する本連載。政府が“エネルギー政策の転換”ともいうべき発表を相次いで行った2020年7月。それにより今後の再エネ市場は大きく変化すると見られるなかで、ソーラーシェアリングはどのような位置付けになっていくのかを考察します。

» 2020年08月03日 07時00分 公開

 7月に入って、経済産業省からエネルギー政策の転換とも言うべき発表が相次ぎました。2020年7月3日の梶山経済産業大臣の会見では非効率石炭火力発電のフェードアウトが、7月17日の会見では「再エネ型経済社会」の創造と「再エネ経済創造プラン」の策定について発言がありました。今回は、急速に動き出した再生可能エネルギーへの政策シフトの動きの中で、ソーラーシェアリングはどのような位置づけになっていくかを考えます。

見直しが不可避な日本のエネルギーミックス

 2030年を目標年次とする日本政府のエネルギーミックスでは、電源構成において再生可能エネルギーと原子力発電を非化石電源と定義し、これらを44%にまで拡大、火力発電の比率は現在の80%程度から56%程度まで削減する計画でした。

2018年度時点の発電電力量別の電源構成比(出典:エネルギー白書2020)

 しかし、東京電力福島第一原子力発電所の事故をきっかけとして一時的に全面的な稼働停止まで至った原子力発電が、エネルギーミックスの通り2030年に電源構成比20〜22%を達成していくには、東日本大震災以前である2010年度時点の7割程度まで発電所の稼働を進める必要があります。既に24基の廃炉が決定するといった現状では、この数値の達成は非常に困難になったと言えます。

 また、石炭火力発電も2018年に策定された第5次エネルギー基本計画の中でフェードアウトを進めることが既に定められており、今回それを実行する方針が示されたことになりますが、そうなると石炭火力発電もエネルギーミックスにおける2030年の電源構成比26%という数値目標は、今後下方修正する必要が出てきます。

 では、この原子力発電と石炭火力発電という2つの大きな電源が抑制される分を、パリ協定などの低炭素化に向けた目標を達成しつつ賄うとすれば、その手段は再生可能エネルギーしかありません。

 再生可能エネルギーの電源構成比は、2018年度時点でエネルギーミックスの中で再生可能エネルギーに含められている大規模水力発電まで合わせると、国内の総発電電力量の16.9%です。そして、経済産業省のエネルギー白書などで使われる新エネルギー等という括りで見ると、水力発電を除いた部分で2010年度には2.2%(253億kWh)だったものが2018年度には9.2%(963億kWh)まで増加しました。

 ということは、現在のエネルギーミックスに示された2030年時点で22〜24%という再生可能エネルギーの電源構成比を達成するだけであれば、この10年間と同水準の新規導入を、次の10年も進めていけばいいということになります。しかしながら、既に我が国の再生可能エネルギー導入目標は国際的な水準から不十分と言われています。

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