熱を無電力で送れるヒートパイプ、世界最大6.2kWの輸送に成功省エネ機器

NEDOと名古屋大学らが世界最大という6.2kW(キロワット)の熱エネルギーを無電力で輸送できるループヒートパイプを開発したと発表。工場の排熱などの未利用熱を効率良く活用でき、省エネルギー化に貢献できる成果だという。

» 2020年11月02日 07時00分 公開
[スマートジャパン]

 新エネルギー・産業技術総合開発機構(以下、NEDO)は、未利用熱エネルギー革新的活用技術研究組合(以下、TherMAT)、名古屋大学と共同で、世界最大という6.2kW(キロワット)の熱エネルギーを無電力で輸送できるループヒートパイプを開発したと発表した。未利用熱を効率良く活用でき、省エネルギー化に貢献できる成果だという。

開発したループヒートパイプ 出典:NEDO

 近年、工場排熱や自動車エンジンからの排熱など、これまで未利用であった熱エネルギーを有効活用する技術が注目されている。こうした未利用熱を有効利用するためには、熱源から利用先まで熱を損失なく運ぶ熱輸送技術が重要になる。これまでは熱輸送のために機械式のポンプが用いられてきたが、機械式ポンプは、電力が必要であり効率面などでも課題があった。そのため、無電力で高効率に熱を輸送する技術が求められていたという。

 今回開発したループヒートパイプは、蒸発器、蒸気管、凝縮器、液管から構成。蒸発器内に設置されたウィック(多孔質)の毛管現象により、細い管(毛管)の内側を液体が表面張力を駆動力にして移動し、これがポンプの役割を果たす。また、従来のループヒートパイプ蒸発器構造は円筒形が一般的だったが、蒸発器をボックス構造にすることで、熱伝導性の向上を図るとともに、熱源と平面での高効率な接触を可能とした。

開発したループヒートパイプの構造 出典:NEDO

 この他、システムの大型化により輸送管が大口径化しても、圧力損失を最小限とする新構造を開発。このように蒸発器構造、凝縮器構造をそれぞれ工夫することにより、水冷自然放熱条件において6.2kWの熱輸送を達成することに成功した。

 開発したループヒートパイプは今後、自動車のエンジンや工場からの排熱利用、電気自動車やデータセンターの機器類の熱マネジメント、大型発熱機器の冷却などへの適用を図り、抜本的な省エネルギー化を目指すとしている。

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