ペロブスカイト太陽電池を高性能化、方法は「イオンを1滴添加するだけ」太陽光

金沢大学の研究グループは2021年4月、イオン液体を少量添加するだけでペロブスカイト太陽電池の高性能化と長寿命化を実現する方法を開発したと発表した。次世代の太陽電池として期待されるペロブスカイト太陽電池の普及に貢献する成果だという。

» 2021年05月14日 06時00分 公開
[スマートジャパン]

 金沢大学の研究グループは2021年4月、イオン液体を少量添加するだけでペロブスカイト太陽電池の高性能化と長寿命化を実現する方法を開発したと発表した。次世代の太陽電池として期待されるペロブスカイト太陽電池の普及に貢献する成果だという。

開発したペロブスカイト太陽電池の外観 出典:金沢大学

 ペロブスカイト太陽電池は、溶液を塗布するという手法で低コストに製造でき、かつ現在主流のシリコン系の太陽電池より高い変換効率が期待できるため、次世代の太陽電池として期待されている。その一方で、寿命や耐久性の向上が実用化に向けた主な課題とされている。

 今回研究グループは、ペロブスカイトを塗布で製膜する際、事前にイオン液体をペロブスカイト前駆体溶液に少量添加することで、膜が数十ナノメートルサイズのナノ粒子膜化する技術に着目。この技術は6年前に同研究グループが開発したもので、今回はこの技術を高性能なトリプルカチオン型ペロブスカイト太陽電池作製に応用した。

 具体的にはまずイオン液体添加によりナノ粒子膜化したペロブスカイト膜を作製し、その上にトリプルカチオン型ペロブスカイトを製膜。これにより、ナノ粒子を成長核としてトリプルカチオン型ペロブスカイトが欠陥の少ない高品質な膜に成長することを発見した。

イオン液体を添加する手法のイメージ 出典:金沢大学

 この高品質化により、太陽電池のエネルギー変換効率は19.4%を達成したほか、電流値である短絡電流密度も25.3 mAcm-2と大きな値を示すことが分かった。さらにこの技術で製膜した膜の欠陥が少ないため、劣化の原因となる大気中の水などの膜に入りこみを抑えることができ、太陽電池の長寿命化にも成功。具体的には、従来の手法で作製したペロブスカイト太陽電池は2500時間で発電しなくなったが、イオン液体を添加したペロブスカイト太陽電池は6000時間を超えても初期性能の8割を保持し続けることができた。

 金沢大学では今後、今回の手法についての研究開発を継続し、ペロブスカイト太陽電池の実用化およびさらなる高性能化と低コスト化を目指すとしている。

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