無くならない太陽光発電所の法令違反、適切な運営に必要な視点とは?法令違反を防ぐ太陽光発電の保安ポイント(1)(1/3 ページ)

法令を順守していない太陽光発電が大きな問題となっている昨今。主力電源として太陽光発電事業を安全かつ安定的に運営していくためには、どうのような点に留意すべきなのか。本連載では、こうした太陽光発電事業における法令順守や適切なO&Mなど、運営のポイントについて解説します。

» 2022年01月24日 07時00分 公開

 私が所属する野原ホールディングスでは、「太陽光発電の主力電源へ(補助的な主力電源「化」ではない)」「O&M(保守保全、点検、雑草対策、予知保全など)の高度化・高効率化」「O&M業の地位の向上」を目指し、発電事業支援、O&Mおよびそのデジタル・スマート化に取り組んでいます。

 私自身は、社会的活動として太陽光発電協会(以下、JPEA)、再生可能エネルギー長期安定電源推進協会(以下、REASP)、日本太陽光メンテナンス協会(以下、JSMA)に所属し、太陽光発電の普及活動などもおこなっています。本サイトでは、2018年4月から2019年5月まで「基礎から学ぶ太陽光発電所の雑草対策(全11回)」を連載させていただきました。当時の年間の記事ランキングでは1位となるなど、大変多くの方に記事を購読いただき、執筆者として大変喜ばしく、光栄だと感じています。この場をお借りしてお礼を申し上げます。

太陽光発電業界をめぐる“追い風”と“向かい風”

 さて、2021年は太陽光発電業界に“大きな追い風”と“向かい風”が吹き、FITからの新しいビジネスモデルへの移行期ともいえる年だったと思います。

 大きな追い風といえる要因としては、政府の「2050年のカーボンニュートラル宣言」を発端とする第6次エネルギー基本計画の閣議決定、さらには住宅および建設分野のさらなる創エネ・省エネの推進に向けて、2025年の「ZEH(Net Zero Energy House)/ZEB(Net Zero Energy Building)」の義務化といった動きが挙げられます。

 一方で、大きな向かい風といえるのが、太陽光発電事業に対する各種規制の強化や、太陽光発電に対する社会からの視線が厳しくなっているということです。具体的な規制としては、発電事業終了後の設備放棄や不法投棄などの懸念から「廃棄費用等の積立ての実施」、自然災害を含む低圧発電所の事故が増大していることから「産業用低圧発電所の事故報告の義務化」など、各種法令、条例による規制・規律強化が行われました。

 また、2021年7月に発生した熱海市土石流災害は、その発生原因として、隣接する太陽光発電所が疑われるなど、太陽光発電事業に対する社会の視線が厳しくなっていることを痛感した一件となりました。私は、このように太陽光発電の置かれている社会的な立場や、事業リスクが年々増大していることを危惧しています(今回、執筆する大きな理由の一つにもなっています)。

低い法令順守意識、それが招く事業リスク

 太陽光発電が日本のエネルギーインフラを支える主力電源となっていくためには、法令の順守は当然ながら、事業と地域との共生を図り、長期安定的かつ安全な運営を確保する必要があります。当然、こうした理念を持ち、健全な事業運営を行っている事業者も存在しています。

 しかし、残念ながら多くの太陽光発電所において、適切なO&Mや安全対策および法令順守がなされていないという現状があり、それが上述した規制強化や社会的な印象を招いているといえます。当然、健全な運営に取り組む事業者にとっては、事業リスクが増している状況です。

 業界諸団体などさまざまな方からの情報では、地域により大きな差はありますが、産業用発電所(住宅除く10kW以上)総件数の95%を占める低圧発電所の約50%において「標識・柵・塀・施錠が未設置」、つまり法令順守をしていないと推測されています。

 個人的にその現状を肌身で実感したのは、市町村でO&Mに関する講演を実施した際です。多くの市町村の担当者から「法令順守及び法令順守されていない場合のリスクを講演内容に含めて欲しい」と、必ず要望がありました。

 次に、こうした現状についてより詳細に説明します。

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