無くならない太陽光発電所の法令違反、適切な運営に必要な視点とは?法令違反を防ぐ太陽光発電の保安ポイント(1)(3/3 ページ)

» 2022年01月24日 07時00分 公開
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1:標識及び柵塀等の設置義務に関する2回目の注意喚起

 1つ目の動向は、2021年4月1日に資源エネルギー庁より、2回目となる標識及び柵塀等の設置義務について「FIT制度に基づく標識及び柵塀等の設置義務に関するお知らせ(注意喚起)」注意喚起が実施されました。1回目の2018年11月8日、FIT認定基準に基づく標識・柵塀等の設置義務に係る注意喚起を実施しています。

 明らか1回目と違うのは、関係省庁や地方自治体などに標識や柵塀等が未設置の設備や、柵塀の設置が不適切な設備の情報が引き続き寄せられている状況に対し、資源エネルギー庁は不適切発電事業者に対し再エネ特措法(FIT法)第12条に基づき指導を行い、指導の後に改善されない場合には、改善命令や認定取消しの対象となる可能性があることを明記したことです。また同日より電力供給開始までに標識・柵塀を設置する誓約書提出を必須化しています。

2:行政指導の公表

2つ目は上記を踏まえ資源のエネルギー庁で2021年9月7日、大量導入小委員会にて再生可能エネルギー政策の直近の動向として、以下の図表1の標識・柵・塀に対する情報を開示し、指導が2019年度:194件指導(179件改善、15件改善待ち・対応確認中)から 2020年度:757件指導(111件改善、646件改善待ち・対応確認中)に大幅に増え、担当員の増員と外部委託を活用し執行力の強化を図ることを明記したことです。また、対応確認中の状況がどうなったか注目すべき点だと思います。

3:低圧の事故報告義務化

 3つ目は2021年4月1日、経済産業省より、小出力発電設備(産業用低圧10kW以上50kW未満)についても事故報告が義務化になったことです。

 事故報告は事故を覚知してから発電所を管轄する産業保安監督部に設備の所有者または占有者が「24時間以内に事故の概要(速報)」について、「30日以内に事故の詳細(詳報)」について報告を行う必要があります。

 事故が発生した場合、発電事業者は自らが報告し、事故への対応、今後の対応を求められます。特に今後の対応については追加投資が必須になり、専門家でもない発電事業者にとってはハードルが高いレベルのため、定期点検などを通じて普段から保安(O&M)事業者と施工者との良好な関係を築き、いざという時に頼れる味方を構築すべきと思います。

資源エネルギー庁HOPへの不適切案件に関する情報提供フォームへの相談内容(*資源エネルギー庁2021年9月7日再生可能エネルギー政策の直近の動向より

 次回はこれらの事実に対し、法令違反を防ぎ、優良発電事業者を守り、増やすための保安(O&M)業務のポイントをお伝えします。また、2022年は2012年にFIT法が開始されてから10年が経過し、保安のレベルが初期不良・故障のトラブルから、劣化・短寿命化などトラブルに移行しています。保安に対するニーズや「スマート保安」など新たな制度、スマート技術も開発されおり、こうした最新動向についても順次紹介する予定です。

 元来、日本人は良いものを作り、大切に取り扱ってきた文化があります。太陽光発電も同じだと私は考えています。経済合理性を伴ったO&Mやこれから導入が進むデジタル化、新しい技術の開発などを取り入れつつ、リパワリングなどで20年の寿命を25年、30年、FIT終了後でも安定供給できる発電所が可能だと考えています。

 しかし、そのために、私を含め、発電事業者及び業界関係者が、発電所のコンディションを理解し、状況変化に対応できることや、これまで培ったO&Mの経験や技術を、これから新設する太陽光発電所へフィードバックしていく必要があると感じています。同時に、O&Mに携わる企業・人材には、今後より重要な役割が求められるでしょう。本連載がこうした役割を担う企業や人材の方に役立つものとなれば幸いです。

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著者プロフィール

増田幹弘(マスダ ミキヒロ)
野原ホールディングス株式会社 経営企画部 再生エネルギープロジェクト室長
太陽光発電評価技術者、緑の安全管理士、「東京都農薬指導管理士」

大阪出身、近畿大学卒業。1999年、私費にて参加したエコに関する研究会にて、電気を庭に取り付けた太陽光発電と自動車の大型バッテリーから、給湯は太陽熱を利用するなどの、今でいうゼロエネルギー住宅(奈良県)を視察し感銘を受ける。自宅をオール電化にし屋根には発電システムを取り付け、自宅エネルギー消費データを2年間記録、上記研究会にて発表。その後も省エネ、省資源についての研究を深め、建材の開発、リサイクルシステム、工場のエネルギー消費削減に大きく貢献。

2009年、野原産業(現 野原ホールディングス)に入社。2013年、事業開発部において八ヶ岳研修所の遊休地活用事業として太陽光発電プロジェクトを主幹。現在は、太陽光発電に関わる新事業として、第三者の視点からの太陽光発電設備の保守・点検(O&M)サービス「SUN SUN GUARD 20」を展開。豊富な知識と多様な事例、経験から、太陽光発電事業者向けセミナーにて講師も務める。


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