ついに公開!「営農型太陽光発電の設計・施工ガイドライン」 そのポイントを解説ソーラーシェアリング入門(51)(1/2 ページ)

ソーラーシェアリング(営農型太陽光発電)について解説する本連載。今回はNEDOが公開した「営農型太陽光発電システムの設計・施工ガイドライン2021年版」について、その策定にも携わった筆者が内容のポイントを解説します。

» 2021年11月24日 07時00分 公開

ついにソーラーシェアリング専用の設備ガイドラインが公表

 ソーラーシェアリング(営農型太陽光発電)が、エネルギー政策や農業政策、環境政策など、さまざまな観点から注目されるようになって久しく、農林水産省の統計からも、着実に国内での導入量が増加してきています。その一方で、長らく“積み残された課題”となっていたのが、発電設備の設計・施工に関して、参考となる公的なガイドラインなどがないことでした。

営農型太陽光発電システムの設計・施工ガイドライン2021年版(クリックでPDFへ)

 これは、「従来通りの農業生産の継続を前提とした太陽光発電」という特徴を持つソーラーシェアリングの設備について、農業設備の観点から考えるべきか、発電設備の側から考えるべきか――という問題も関わっています。

 そんな中で、2021年11月12日にNEDOから「営農型太陽光発電システムの設計・施工ガイドライン2021年版」が公表されました。

 私も専門家として、このガイドラインの策定に足かけ2年にわたって関わってきました。やっとこれが日の目を見たという思いがありますが、ガイドラインの冒頭にもある通り、まだ追加的な実証が続いている部分など、今後さらに検証していく必要があるものも残っています。今回はこのガイドラインの策定に携わった立場から、筆者の個人的な観点で、その概要を紹介していきます。

農業も踏まえた発電設備としての観点からのガイドライン

 今回の「営農型太陽光発電システムの設計・施工ガイドライン2021年版」は、NEDOの「安全性・信頼性確保技術開発事業」の一環として実施されたものです。テーマとしては「傾斜地設置型、営農型、水上設置型発電設備環境に関する安全設計・施工のためのガイドライン策定」となっており、ソーラーシェアリング単独ではなく、傾斜地や水上設置など、特殊な設置環境の太陽光発電を取りまとめて策定されています。

 そして冒頭の視点からすると、NEDOの事業であるということからも分かる通り、発電設備としての観点から安全性や信頼性の確保を図っていくために策定されたガイドラインということになります。とはいえ、営農型である以上は設計段階から農業への配慮は必須ですし、農業機械などによる設備破損などの事故も防止する必要がありますから、農業面での設計検討や施工への配慮も最大限含んでいます。一方で、営農型の設備であればあらゆるものに適応されるというわけではなく、ガイドラインの冒頭に、下記の通り対象となる設備についての記述があります。

ガイドラインの適用範囲

 今回のガイドラインの対象は、営農型太陽光発電設備として一時転用許可を受けて設置するものに限り、設計としては高さが9mを超えるもの、追尾型システムや畜舎・農業用ハウスなど園芸施設に設置されるシステムについては対象外としています。では、その中身についてもう少し詳しく見ていきましょう。

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