カーボンニュートラルへの挑戦

微生物燃料電池でCO2排出ゼロの水処理、栗田工業が数年内の実用化へ実証蓄電・発電機器

栗田工業が排水中の有機物を電気エネルギーに変換することのできる微生物発電セルを開発し、「微生物燃料電池」としての実用化に向けたスケールアップに成功。電力消費やCO2排出量の削減につながる、微生物燃料電池を利用した排水処理装置の実用化に向け、実排水での適用評価を開始する。

» 2022年01月27日 06時00分 公開
[スマートジャパン]
開発した微生物電量電池セル 出典:栗田工業

 栗田工業は2021年1月20日、排水中の有機物を電気エネルギーに変換することのできる微生物発電セルを開発し、「微生物燃料電池」としての実用化に向けたスケールアップに成功したと発表した。電力消費やCO2排出量の削減につながる、微生物燃料電池を利用した排水処理装置の実用化に向け、実排水での適用評価を開始する。

 工場の排水は周辺環境に影響を与えない水質に処理し、下水道や河川・海域に放流されている。しかし、排水処理において広く用いられている活性汚泥法、曝気のための電力消費や大量に発生する余剰汚泥(廃棄物)の処理・処分に伴うCO2排出量が大きく、その削減が課題となっている。

 この課題解決策として注目されているのが微生物燃料電池だ。この電池は、発電菌と呼ばれる微生物の働きにより、排水中の有機物を分解処理すると同時に、従来汚泥となっていた有機物を電気に変換できる特徴がある。そのため、創出した電気を用いて排水処理することが可能となり、CO2排出量の削減につながるという。しかし、微生物燃料電池は本電池は、排水処理効率や発電効率、性能の長期安定維持、実規模サイズへのスケールアップなどに課題があり、実用化には至っていなかった。

微生物電量電池を利用した排水処理のイメージ 出典:栗田工業

 栗田工業では微生物燃料電池の実用化に向けて、同社の持つ水処理分野の知見を基に開発を進め、電池の構成に好適な材質の選定と、それらを組み合わせた装置形状や構造の最適化を図った。その結果、日清紡ホールディングスと共同で実用化に向けた微生物発電セルの実規模サイズへのスケールアップに成功したという。実規模サイズでは他に例がないというCODCr除去速度20kg/m3/d、発電量200W/m3性能を達成した。

 同社ではこの開発したシステムを活用し、数年以内でのCO2排出量実質ゼロの排水処理の実現を目指すという。また、微生物燃料電池」中心とした排水処理の装置構造、運転方法などに関して、10件以上の特許を出願しており、実排水への適用評価を開始することでさらなる性能改善を進めるとしている。

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