ソーラーシェアリングの普及に向けて、今後考えるべき3つの論点とは?ソーラーシェアリング入門(53)(1/3 ページ)

2022年に入り農林水産省が普及に向けた新たな有識者会議を立ち上げるなど、再エネ普及策の一つとして注目が集まるソーラーシェアリング。一方、国内での広がりに伴い、見えてきた新たな課題も。今回はこうしたソーラーシェアリングのさらなる普及に向けて解決すべき課題について解説します。

» 2022年02月10日 07時00分 公開

 2022年は年初からエネルギー政策に関する大きな動きが相次ぎ慌ただしいスタートを切っていますが、ソーラーシェアリング(営農型太陽光発電)も一つ動きがありました。農林水産省が、営農型太陽光発電に対する社会的な関心の高まりや、昨年策定された「みどりの食料システム戦略」においても営農型太陽光発電による地産地消型エネルギーマネジメントシステムの構築を掲げたことを受けて、「今後の望ましい営農型太陽光発電のあり方を検討する有識者会議」(以下、有識者会議、クリックで農水省のサイトへ)を新たに発足させました。

「今後の望ましい営農型太陽光発電のあり方を検討する有識者会議」の位置付け 出典:第1回同有識者会議の農林水産省資料より

 私も委員を拝命し、2月2日開催された有識者会議の第1回会議に参加してプレゼンテーションを行ってきましたが、議論に用いられた各種資料が上記リンク先のページで公開されています。

 今回は有識者会議の発足を契機として、ソーラーシェアリングの普及に向けて今後考えていくべき課題について整理してみたいと思います。

普及が進むソーラーシェアリング、今後の課題とは?

 現状、農林水産省から公表されている農地転用許可件数は、2020年3月末時点で2653件となっていますが、業界メディアなどの調査や私が独自に調べている数字感では、2021年末時点で累計4000件程度に達していると推定しています。

ソーラーシェアリングの普及状況 出典:第1回同有識者会議の農林水産省資料より

 事例件数が着実に増えていく中で、普及に向けた課題として考えられるのは「どこでやるのか」「誰がやるのか」「どうやるのか」という3点です。

 「どこでやるのか」は、ソーラーシェアリングが農地であれば農用地区域内農地や第1種農地など、土地利用に厳格な規制のある農地でも導入できる中で、生産性の高い優良農地での設置を推進すべきか、あるいは遊休農地や荒廃農地など生産性が低い場所の下支えにすべきかといった点です。

荒廃農地を再生したソーラーシェアリング(千葉市緑区大木戸町)

 筆者個人としては、基盤整備された優良農地すら後継者の不在で先行きが不安視される中、国全体の農業生産の地盤沈下を防ぐためにあらゆる農地において適切な導入方法を探るべきと考えています。また、農業機械などの電化による再生可能エネルギー利用促進を図り、農業生産の脱炭素化を進めることは、みどりの食料システム戦略にも掲げられたテーマですから、その礎(いしずえ)となる農地・農村における再生可能エネルギー生産の拡大も進めていかなければなりません。

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