変換効率20%で1000時間発電できるペロブスカイト太陽電池、NIMSが開発に成功太陽光

物質・材料研究機構が太陽光に対して20%以上の光電変換効率を維持しながら、1000時間以上の連続発電に耐える耐久性の高いペロブスカイト太陽電池の開発に成功した。

» 2022年10月14日 16時55分 公開
[スマートジャパン]

 物質・材料研究機構(NIMS)は2022年9月、太陽光に対して20%以上の光電変換効率を維持しながら、1000時間以上の連続発電に耐える耐久性の高いペロブスカイト太陽電池を開発したと発表した。

 次世代の高効率太陽電池として注目されているペロブスカイト太陽電池。溶液を塗布するだけで低コストに製造でき、現在主流のシリコン系の太陽電池より高い変換効率が期待できる。一方、ペロブスカイト太陽電池は水分との反応により劣化しやすく、高い光電変換効率と長期耐久性の両立が課題となっている。

 一般的なペロブスカイト太陽電池は、ペロブスカイト層が太陽光を吸収して、電子と正孔を発生させる。この電子と正孔は、ペロブスカイト層に隣接する電子輸送層(電子を取り出して輸送する)と正孔輸送層(正孔を取り出して輸送する)へ移動することで電流として取り出される。そのため、各層と界面での電子と正孔のスムーズな移動を保ちつつ、水分子を遮蔽する界面制御が、発電効率と耐久性を両立させる鍵となっていた。

 NIMSは今回、電子輸送層とペロブスカイト層の界面にフッ素原子を持つ(=撥水性を有する)ヒドラジン誘導体を導入。これにより、電子輸送層を通じてペロブスカイト層に侵入する水分子を遮断することで、太陽電池の耐久性を高め、発電ロスの原因となるペロブスカイト表面欠陥の形成を抑えることに成功した。また、正孔輸送層とペロブスカイト層の界面にホスホン酸誘導体を導入することにより、正孔輸送層の欠陥を極小化でき、太陽電池の効率を向上できたという。

開発したペロブスカイト太陽電池の模式図 出典:NIMS

 今回開発したペロブスカイト太陽電池は1cm角のサイズで、約100℃でプラスチック上に作製できるため、汎用太陽電池の軽量化も可能にするとしている。

 NIMSでは今後、今回の成果を利用して、界面に導入可能な種々の分子をデータベース化し、データ駆動型研究により、界面制御のための分子設計を行うことによって、さらに高効率で耐久性の高いペロブスカイト太陽電池の研究を進める方針だ。

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