営農型太陽光の“農地転用申請数の問題視”に感じる、制度議論と現場の乖離ソーラーシェアリング入門(59)(1/2 ページ)

ソーラーシェアリングについて解説する本連載。今回は、最新の調達価格等算定委員会において問題視された「特定営農型太陽光発電」の一時転用許可申請について、事業者の視点から考えてみます。

» 2023年01月20日 07時00分 公開

 毎年この時期になると、調達価格等算定委員会におけるFIT/FIP制度の議論動向、特に調達価格と制度設計に関する話題が注目されますが、今年は低圧規模のソーラーシェアリングが対象となる「特定営農型太陽光発電」に関する議論がなされました。調達価格等算定委員会における机上の議論と、導入を図る現場実態の乖離(かいり)が大きいことも改めて確認できた内容だったこともあり、今回はこの議論について取り上げてみます。

そもそも特定営農型太陽光発電とは何か

 特定営農型太陽光発電とは、FIT制度において2020年度から低圧規模の事業用太陽光発電設備に対する地域活用要件が定められた際、「少なくとも30%の自家消費等を実施」するという要件を一部の営農型太陽光発電には適用しないとしたものです。具体的には、3年間を超える一時転用許可期間を得られる営農型太陽光発電事業を、特定営農型太陽光発電と区分することとされました。これにより、従来はFIT案件の件数ベースで大半を占めてきた低圧規模の事業用太陽光発電が大きく規制された形になった中で、営農型太陽光発電への参入が加速することになりました。

特定営農型太陽光発電の事業動向 出典:第83回調達価格等算定委員会

 上記の第83回調達価格等算定委員会の資料によると、特定営農型太陽光発電の事業計画認定数は2020年度に3,559件、2021年度に4,070件となっており、農林水産省が公表している営農型太陽光発電の一時転用許可件数が2020年度末時点で3,474件であることを踏まえると、急増と言えるくらいに新規事業の計画が進んでいることが伺えます。このデータだけを見れば、特定営農型太陽光発電という区分はソーラーシェアリングの普及を後押しし得る施策になったと言えるでしょう。

調達価格等算定委員会で何が問題視されたのか

 では、第83回調達価格等算定委員会において、特定営農型太陽光発電についてどのような議論がなされたのでしょうか。下記は当日の資料から該当する部分を抜粋したものですが、特定営農型太陽光発電として事業計画認定を取得していながら、農地の一時転用許可を得た事例が少ない点が問題視されたようです。2020年度に事業計画認定申請を出した事業者に対して調査票を送付し、回答を得た結果についてまとめられています。

特定営農型太陽光発電の一時転用許可に関するアンケート結果 出典:第83回調達価格等算定委員会

 回答のあった673件のうち、614件(91%)が一時転用許可をまだ受けていないこと、それらの中で一時転用許可の申請準備中とした事業が77%を占めることなどが分かります。一時転用許可申請書の提出予定無しとした事業者は全体の9%ですから、これだけを見れば3年の期限までに一時転用許可を取得して運転開始を目指している事業者が、大半を占めていることが分かります。

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