kWhとΔkWの同時最適化を目指す「同時市場」、導入に向け「中間とりまとめ」が公表「同時市場の在り方等に関する検討会」(2/3 ページ)

» 2024年06月27日 07時00分 公開
[梅田あおばスマートジャパン]

同時市場の入札規律・電源運用の方法は?

 現行制度では、「適正な電力取引についての指針」により、市場支配力や相場操縦の観点から、発電事業者は相対取引や取引所取引を含めた「広義の電力市場」に対して、

  • 平常時:「予備力(0〜1%相当)」や入札制約(燃料制約等)を除いた供給力全量
  • 緊急時:供給力全量

を供給することが求められている。

 同時市場においても、相対取引が行われる点は同様であるが、系統信頼性を含む安定供給や経済性の追求等の社会全体でのメリットを高める観点からは、発電事業者がより多くの電源、つまり「予備力」も含めた供給力全量を、広義の電力市場に供出することが望まれる。

 また現行制度では、容量市場で落札した安定電源は、その発電余力をスポット市場・時間前市場又は需給調整市場の「いずれか」に入札すれば、リクワイアメントを満たすとされている。しかしながら現実には、需給調整市場では応札量不足や価格高騰等の問題が生じている。

表1.現行制度と同時市場の入札規律等 出典:同時市場の在り方等に関する検討会

 よって同時市場においてはこれらの課題を解決するため、調整機能がある電源については、kWh市場とΔkW市場の「両方」に入札する義務を課すことが求められる。

 また、前日(例えば前日10時)断面で開催される同時市場において入札された電源については、時間前同時市場(例えば前日19時や当日9時)の断面においても入札を継続することを求めることが考えられる。ただし、電源の起動時間には人員配置や設備的な制約があるため、時間前同時市場への入札の在り方については、今後の検討が必要とされる。

同時市場における発電事業者の主体性

 言うまでもなく電源は発電事業者の私有財産であり、発電事業者が法令の範囲で自由に使用し、収益を上げることが原則である。また、kW(設備形成・維持)とkWh(燃料を含む発電原資)を中長期にわたり適切に確保することが重要であるため、電源の起動停止や出力配分について発電事業者に一定の裁量を持たせ、予見性を与えることが望ましい。

 よって、同時市場における電源の入札区分(自己計画電源/市場計画電源)は、原則、発電事業者が自由に選択できることとして、出力容量下限/上限についても、電源の各種制約等を踏まえ、発電事業者が主体的に設定することが認められる。

図4.発電事業者が主体的に選択・設定可能な仕組み 出典:同時市場の在り方等に関する検討会

 ただし、相場操縦や売り惜しみ等の防止の観点から、出力容量上限を不当に低く設定していないか等の適切な取引規律や厳格な監視が必要とされるほか、需給逼迫時には自己計画電源であっても、TSOにより緊急的な電源運用を行うことも想定される。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

特別協賛PR
スポンサーからのお知らせPR
Pickup ContentsPR
あなたにおすすめの記事PR