第67回「再エネ大量導入・次世代電力ネットワーク小委員会」では、国内の太陽光・風力発電の導入ポテンシャルについて、複数の機関から試算結果が報告された。その概要を紹介する。
国内の再エネ電源導入ポテンシャルはどの程度あるのか。環境省の「令和3年度再エネ導入ポテンシャルに係る情報活用及び提供方策検討等調査報告書」では、再エネ賦存量から、法令・土地用途などによる制約があるものを除いた量を「導入ポテンシャル」と定義しており、例えば地上設置太陽光では1,010GW、屋根等の建物系太陽光では455GW、と推計している。
ただし、導入ポテンシャルは制約条件の考え方次第で大きく変わり得る数値である。資源エネルギー庁の再エネ大量導入・次世代電力ネットワーク小委員会(第67回)では、3つの研究機関から、それぞれの方法・考え方に基づいて試算された再エネ導入ポテンシャル等について報告が行われた。
再エネ電源の導入に際しては、地域社会との共生が大前提となる。近年、再エネに関する条例を制定する地方公共団体が増えており、その1割程度が再エネの促進措置を主な内容とする条例であるのに対して、約7割は再エネの規制的措置を主な内容としている。
日本エネルギー経済研究所及び横浜国立大学は、条例による太陽光発電「抑制区域」を考慮した地上設置型太陽光発電の導入ポテンシャルの試算結果を報告した。同試算では、環境省定義と同様に、個々の事業者(電源)の経済性判断や系統制約、地域住民との調整等の社会的制約は考慮していない。
なお同試算では、国土面積377,975km2のうち、安全性や環境保全の観点から太陽光発電の設置が困難もしくは推奨されない保安林等をあらかじめ除いており、雑草地等4,887km2(国土の1%)のみを太陽光発電の設置対象土地としている。
雑草地など4,887km2のうち、再エネ「抑制区域」に指定される区域を条例指定頻度の高い順に、全市町村で除外した結果が図4である。同試算では、現時点で再エネ規制条例を策定済みの市町村だけでなく、全ての市町村を対象として一律に除外している。
抑制区域に指定される全ての区域を除外する最も保守的な「全抑制区域除外ケース」では、太陽光が設置可能な面積は383km2となり、景観計画区域まで認める場合は3,250km2となる。
この設置対象面積を太陽光発電の設備容量に換算(0.111GW/km2)したものが、図5である。かなりの面積が陸上風力発電と競合するため、仮にすべて陸上風力発電を優先させる場合には、太陽光の設備容量は20GW(全抑制区域除外ケース)〜107GW(抑制区域部分除外ケース)に留まると推計された。
ただし、先述のように同試算では農地が完全に除外されている。太陽光発電協会では、農地における導入ポテンシャルを1,593GWと推計しており、今後の営農型太陽光発電の普及や条例における取り扱い次第で、地上設置型太陽光のポテンシャルは大きく変わり得ることに留意が必要である。
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