排出量取引制度は、市場機能を活用することにより、社会全体として費用効率的にGHG排出量を削減することを目的とした制度である。ただし、短期的な排出枠の需要と供給のバランス次第でその市場価格は大きく変動し得るため、炭素税と比べると相対的にカーボンプライスの予見性は劣後し、企業の中長期的な投資の予見性も相対的に低いことが課題とされている。
このため諸外国のETSでは、量的アプローチや価格的アプローチなど、様々な市場安定化措置が導入されている。価格の上昇(高騰)対策としては、一定の価格水準に達した際にあらかじめ政府が留保した排出枠(リザーブ)の放出や、固定価格での排出枠の販売などがあり、価格下落対策としては、政府オークションにおける販売量抑制や最低価格設定等の措置が講じられている。排出枠のバンキング(繰越し)やボローイング(前借り)等の柔軟性措置も、市場安定化策として有効である。
日本のETSにおいても、第2フェーズ以降は、取引価格の上限・下限を設定する案が示されている。企業に対して投資予見性を示すためには、長期的な上下限価格の設定が求められる。
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