政府は新たなエネルギー基本計画などの策定に向けて、日本が目指すべき2040年度頃の「GX2040ビジョン」の検討を進めている。その議論を担う基本政策分科会では、さまざまな研究機関などから、今後のエネルギー情勢に関する複数の将来シナリオが提示された。
現在国は、次期エネルギー基本計画や地球温暖化対策計画、及びこれらの前提となる2040年頃の目指すべきGX産業構造「GX2040ビジョン」について、同時並行的に検討を進めている。
中環審・産構審合同会合では、日本の次期NDC(国が決定する貢献)として、2030年度46%削減及び2050年ネットゼロを堅持しつつ、排出削減と経済成長の同時実現に向けた予見可能性を高める観点から、温室効果ガス(GHG)の直線的な排出削減経路に沿い、2035年度60%削減、2040年度73%削減とする案が示されている。
ロシアのウクライナ侵略以降、エネルギー価格が高騰するなど、今後も需給両面で大きな変動が生じる可能性があり、諸外国のエネルギー・気候政策にも変化がみられる。IEAは「World Energy Outlook 2024」において、「将来のエネルギー需給の姿に対して単一の見解を持つことは困難」と指摘しており、世界的に将来のGX進展おける不確実性は高まっている状況だ。
このため基本政策分科会では、2040年度エネルギーミックスは、単一の前提ありきで議論を進めるのではなく、さまざまな変化に柔軟に対応するため、複数のシナリオを用いた幅のある内容とする方向性が示されている。
2050年ネットゼロの実現には、エネルギーの供給と需要の両面でさらなる技術革新が不可欠であるが、現時点で2040年時点の技術進展や社会実装を正確に予想することは困難である。
このため資源エネルギー庁では、2040年度のエネルギー供給を左右する技術として、再エネ、水素等の脱炭素燃料、CCSに着目して5つのシナリオを設定することとした。
また「GX2040ビジョン」案では、パリ協定で示された1.5度目標と整合的なGHG排出削減水準としながら経済成長を実現するため、技術革新により海外との相対的なエネルギー価格差を縮小させることや、GX製品による海外市場開拓を加速させる方向性が示されている。
2022年度の最終エネルギー消費量は2013年度比で5,700万kL減少したが、この内訳としては、省エネ対策導入効果を含む原単位要因が1,500万kLであるのに対して、製造業生産量減少などの活動量・構造要因が2,500万kLと最大であることが報告されている。
これらを踏まえ、2040年度エネルギーミックスを策定するにあたっては、従来の「エネルギーのS+3E」をやや言い換えたかたちとして、以下の3点を重視することとした。
エネ庁では、これらの観点と整合的なシナリオ分析を活用してエネルギーミックスを検討することとしており、基本政策分科会の第66回会合では、6つの専門機関からモデル分析等の結果が報告された。
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