2040年の発電コスト検証のとりまとめ 再エネは「統合コスト」も考慮へ第5回「発電コスト検証WG」(1/6 ページ)

第7次エネルギー基本計画の策定に向けて、将来の各電源の発電コストの検証が進んでいる。第5回「発電コスト検証ワーキンググループ」ではその試算が公開された。本稿ではその中から、主要な電源のコスト検証結果をまとめた。

» 2024年12月24日 07時00分 公開
[梅田あおばスマートジャパン]

 国は、2040年エネルギーミックス検討の参考材料として、様々なタイプの電源の発電コストの検証を行った。発電コストの検証はこれまでと同様に、「モデルプラント方式」に基づき、資本費や運転維持費等の総費用を総発電電力量で割ることで、1kWh当たりのコスト「LCOE」(均等化発電原価)を算出するものである。

 今回の検証対象は、2023年時点(検証実施の直前年)及び2040年時点(エネルギーミックスの対象年)に、新たな発電設備を建設・運転した際のLCOEであり、既存の発電設備を運転するコストではないことに留意願いたい。

2040年のLCOE試算結果(暫定値)は、図1の通りである。

図1.2040年のLCOE試算結果(暫定値) 出典:発電コスト検証WG

 また、太陽光や風力といった変動性電源の比率が増えると、電力システム全体を安定させるために必要となる「統合コスト」が増加する。この統合コストの一部を考慮した発電コスト(=LCOE*)についても検証が行われた。本稿では、代表的な電源の発電コストの内訳等を報告する。

2040年太陽光(事業用)の発電コスト

 発電コスト検証WGでは、再エネ、火力、原子力といった発電技術間の比較を行うため、火力や原子力については直近に運開した4つの発電所のデータの平均値、再エネについては再エネ特措法に基づく発電事業者からの定期報告データの中央値等を参照し、モデルプラントとして仮定している。

 事業用太陽光のモデルプラントとしては、設備容量250kW、設備利用率18.3%、稼働年数は25年及び30年を想定値としている。なお、発電コスト計算の前提条件(太陽光以外のいずれの発電方式でも共通)として、為替レートは2023年の平均141円/$を用いて便宜上将来に渡って変わらないと仮定し、割引率(実質)は一律3%と仮定している。

 以上の前提条件により、「基本ケース」(後述)における事業用太陽光のLCOEは、政策経費あり:8.5円/kWh、政策経費なし:7.9円/kWhと試算された。

図2.事業用太陽光 発電コスト内訳 出典:発電コスト検証WG

 なお、エネルギーミックスの検討において考慮すべきコストとは、発電事業者が直接負担するコストだけでなく、発電に関する社会的費用(政策経費、事故リスク対応費、CO2対策費用等)も含めたコストである。このうち「政策経費」とは、補助金等の国の予算措置による経費や、FIT/FIP価格の算定において利潤として計上されているIRR相当額(事業用太陽光の場合、4.0%)が該当する。

 kWh当たりの政策経費を算出するためには、2040年における各電源の発電電力量を用いる必要があるが、現時点、2040年エネルギーミックス(各電源の発電電力量)は未定である。このため、2040年LCOE(政策経費あり)は、2023年度の発電電力量を用いた暫定値であり、エネルギーミックス決定後に差し替えて確定される。

図3.発電コストと社会的費用の関係 出典:発電コスト検証WG
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