電力広域的運営推進機関のとりまとめによると、2034年度の全国の電力需要が2010年度以来24年ぶりに更新する見込みであることが明らかとなった。データセンターなど、電力消費量の多い設備の増加が影響する見通しだ。
世界的なDX・GXの進展の中で、データセンターや半導体工場の電力需要の増加が見込まれている。第7次エネルギー基本計画案やGX2040ビジョン案では、我が国の産業競争力強化のためには、データセンター等の新たな大規模需要に対し、迅速かつ確実に電力供給を行うための効率的な送配電設備の形成・利用が重要とされている。
一般送配電事業者各社は今後10年間の自社エリアの電力需要を想定し、電力広域的運営推進機関では、これらを取りまとめた「全国及び供給区域ごとの需要想定」を毎年公表している。
今回2025年度の取りまとめ(2024年度時点)では、2034年度の全国の電力需要は、昨年時点の想定値を大きく上回り、2010年度以来24年ぶりに、最大需要を更新する見込みであることが明らかとなった。
今回の需要想定取りまとめ(図1の青線)では、10年後の2034年度における全国の最大需要電力は164,591千kWとなった。前回(2024年度)は前々回(2023年度)の想定値を大きく上方修正したことが話題となったが、今回はそれを更に上回る結果となった。
これは、2023年度実績値157,232千kWと比べ、736万kW(4.7%)の増加、年平均増加率は0.4%である。人口減少や節電・省エネなどの減少影響があるものの、経済成長やデータセンター・半導体工場の新増設が続くため、2034年度に向けて増加すると想定されている。ただし、リーマンショック前は2008年度に最大需要178,513千kWを記録するなど、恒常的に1.7億kWを超える水準であったことと比べると、比較的低位であることに留意が必要である。
なお、電力の将来需要想定は、過去の電力需要実績と、電力需要に影響を与えると考えられる人口、国内総生産(GDP)、鉱工業生産指数(IIP)等の経済指標との回帰分析等を基礎としているが、過去のトレンドだけでは想定が困難なデータセンター等の電力需要については、個別に織り込むこととしている。
また、全国の最大需要は夏季に発生するが、北海道・東北・北陸エリア個別の最大需要は冬季に発生している。
今後の最大需要電力の増減について、2024年度を100とした指数としてエリア別に表したものが図2である。データセンター・半導体工場の新増設計画により、北海道・東京・中国エリアの需要が特に増加すると見込まれている。
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