営農型太陽光発電(ソーラーシェアリング)について解説する本連載。今回は正式に閣議決定された「第7次エネルギー基本計画」と新たな「地球温暖化対策計画」について、営農型太陽光発電に関する記述や今後の施策の見通しについて見ていきます。
去る2月18日に、「第7次エネルギー基本計画」と新たな「地球温暖化対策計画」が閣議決定されました。前回の記事では、これらの計画に関する策定議論の経過を見てきましたが、今回は閣議決定を受けて確定したそれぞれの計画の内容を確認するとともに、営農型太陽光発電に関する記述や今後の施策の見通しについて見ていきます。
閣議決定された第7次エネルギー基本計画では、営農型太陽光発電について「発電と営農が両立する営農型太陽光発電については、事業規律や適切な営農の確保を前提として、地方公共団体の関与等により適正性が確保された事業の導入の拡大を進める」(p.30)と記載され、前回の記事でも取り上げた内容が維持されました。
同様に、地球温暖化対策計画でも「営農型太陽光発電について、下部農地での営農が適切に継続されていない事例が発生する等の懸念が示されており、地域特性に応じた営農、地域共生・地域裨ひ益の観点から、地方公共団体や公設試験研究機関等と連携して推進することが期待される」(p.98)と「地域脱炭素の推進に当たっては、例えばJ−クレジットや営農型太陽光発電の活用により、地域経済の担い手である中小企業、農林漁業者の経営改善等の地域裨ひ益につなげる取組を進める」(p.109)という記述が維持されています。
これらの文言が確定したことにより、今後は地方公共団体や公設試験研究機関などといった主体が、営農型太陽光発電の普及に関与することを後押しするような施策が、それぞれの省庁において実施されていく可能性があります。経済産業省・資源エネルギー庁の所管では、FIT/FIP制度において従来の特定営農型太陽光発電設備に続く新たな支援枠が設けられるかどうかがポイントです。
対象となる営農型太陽光発電事業の範囲を「優良な事例」に限った上で、来年度屋根置きの太陽光発電で実装される「初期投資支援スキーム」のような仕組みが導入されると、一時転用許可期間の制約を口実とした金融機関の融資消極姿勢に対するカウンターとなり新たな取り組みの加速に繋がるかも知れません。
環境省としては、既に地域脱炭素推進交付金の中で脱炭素先行地域づくり事業や重点対策加速化事業の中で地方公共団体による営農型太陽光発電の支援といった取り組みが行われており、そうした流れを更に後押ししていくことが期待されます。
地域脱炭素の推進の文脈では、営農型太陽光発電の活用により「農林漁業者の経営改善等の地域裨ひ益につなげる取組を進める」(p.109)とする記述があること、みどりの食料システム戦略との連携にも言及される中で、「脱炭素とともに、循環経済の実現、持続可能な食料システムの構築、防災・減災や国土強靱化等の複数の課題の同時解決を図る。」(p.109)とする一文もあることから、営農型太陽光発電による持続可能な食料システムの構築に限らない観点での施策拡大に取り組まれる可能性もあると言えるでしょう。
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