次世代地熱発電の推進に向け官民協議会が始動 長期ロードマップを策定へ第1回「次世代型地熱推進官民協議会」(1/4 ページ)

再エネ電源における地熱発電の普及拡大に向けて、実用化が期待されている「次世代型地熱技術」。資源エネルギー庁では新たに「次世代型地熱推進官民協議会」を設置し、新技術の具体的な社会実装に向けた検討を開始した。

» 2025年04月23日 07時00分 公開
[梅田あおばスマートジャパン]

 地熱発電は、天候に左右されず安定的に発電可能な再エネ電源である。第6次エネルギー基本計画において、地熱発電の2030年度導入目標は150万kW・110億kWh(電源構成比1%)、第7次エネルギー基本計画では、2040年度の導入見通しを電源構成比1〜2%程度(150〜300万kW)としているが、2023年度実績では65万kW・34億kWh(0.3%)に留まり、大きなギャップが生じている。

 こうしたギャップを埋めるものとして期待されているのが、77GW以上のポテンシャルがあると想定される「次世代型地熱技術」である。第7次エネ基では次世代型地熱技術について、2030年代の早期の実用化を目指し、研究開発・実証を進め事業化につなげることや、2040年に向けて地熱発電の導入を加速させていくための具体的な計画や目標等を策定することが記された。

図1.日本の次世代型地熱ポテンシャル 出典:資源・燃料分科会

 このため資源エネルギー庁では、次世代型地熱技術の早期の実用化を目指して官民で協議するため、2025年4月に、新たに「次世代型地熱推進官民協議会」を設置した。本協議会は、次世代型地熱技術の2030年代早期の日本国内での実用化および産業競争力強化、2040年・2050年の国内外での普及のため、各技術における課題・技術開発要素の特定・開発スケジュール・実証スケジュール等について具体的な目標・計画等を官民が一体となって議論・策定し、次世代型地熱ポテンシャルにおいて国内の開発可能な資源量の増加に寄与することを目的としている。

次世代型地熱技術の概要

 従来型の地熱発電では、エネルギー源となる「熱」、エネルギーの媒体となる「水」、エネルギーの貯留/流路となる「亀裂」等の3つの要素が揃うことが必要であったが、水や亀裂等が乏しい地下からもエネルギーを取り出す様々な技術の総称として「次世代型」の地熱技術と呼んでいる。主な次世代型技術では天然の熱水が不要であり、広範囲な地熱資源が活用可能という特長がある。

図2.主な次世代型地熱技術 出典:次世代型地熱推進官民協議会

 「ESG(Enhanced Geothermal Systems)」は、岩石を水圧で破砕することで地熱貯留層を人工造成し、水を圧入し蒸気生産させて発電に利用する技術である。貯留層の造成にはシェール開発技術が転用可能である。水圧破砕による誘発地震の懸念が課題とされているが、誘発地震抑制技術の開発も進められている。発電規模は、1箇所数万kW程度と想定されている。

 「クローズドループ」方式は、亀裂のない高温の地熱層に坑井を掘削し、閉鎖系管内に流体を循環させ、周囲の岩石からの熱伝導で地熱を回収し利用する技術である。単一坑井で熱交換を行う同軸二重管方式もある。クローズドループ方式では水圧破砕は不要であるため、誘発地震リスクが低いという特徴がある。

 カナダのEavor Technologies社によるドイツ・バイエルン州 ゲーレッツリートの案件は、8.2MWの発電と60MWの地域熱供給を行うコージェネレーションプラントであり、1ループ目は2025年中の商業運転開始を予定している。

図3.ゲーレッツリート案件の設備構成図 出典:中部電力

「超臨界地熱」は、大深度に賦存する高温高圧な超臨界流体を用いることにより、大規模な発電(10万kW程度)が可能となる技術であり、現在NEDOにより4地域(八幡平、葛根田、湯沢南部、九重)の調査が進められている。現時点、発電コストは従来型地熱と同程度と試算されている。

 「カーボンリサイクルCO2」は、「EGS」の発展形として水の代わりにCO2を注入し、超臨界CO2を破砕流体として用いることにより、誘発地震リスクの低下、効率的な貯留層造成、発電効率の向上等を目指す技術であるが、まだ基礎研究の段階である。

       1|2|3|4 次のページへ

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.