北海道大学と川崎重工業は、アニオン交換膜(AEM)水電解装置向け高性能電極の開発に成功したと発表した。
北海道大学と川崎重工業(以下、川崎重工)は2025年6月2日、アニオン交換膜(AEM)水電解装置向け高性能電極の開発に成功したと発表した。水素製造の低コスト化に貢献できる成果だという。
次世代のエネルギーとして水素に注目が集まっており、特に再生可能エネルギー由来の電力を活用して製造する、グリーン水素の普及施策が広がっている。それに伴い、電気で水素ガスを生産する水電解装置の研究開発も加速している。
現在、販売されている水電解装置の主な水電解方式には、アルカリ水電解、プロトン交換膜(PEM)水電解がある。一方で今回、北海道大学と川崎重工が開発した電極は、アニオン交換膜水電解(AEM水電解)と呼ばれる方式向けのもの。同方式を採用した水電解装置は、商用化された製品は少ないものの、一般的な方式と比較して高価な貴金属の使用量を抑えることができ、低コストで高性能が見込める方式として、将来の適用が期待されているという。
今回両者は、北海道大学が持つ表面処理技術と、川崎重工の水電解装置の知見を合わせて、AEM水電解における電解効率を高める電極を開発。ラボスケールで電解試験を行った結果、世界最高レベルの性能という4.23kWh/Nm3(電流密度1.5A/cm2)を達成した。これは、現在、商用化されているAEM水電解装置の4.8kWh/Nm3と比べて、約 10%のエネルギー削減に相当する。
また、水素技術の研究とイノベーション活動の支援を目的とした欧州の官民パートナーシップ「Clean Hydrogen Partnership」が定める、2030年のAEM開発目標値4.30 kWh/Nm3もクリアした。
今後両者は電極のさらなる耐久性向上やスケールアップなどに向けて研究を継続するとともに、川崎重工では電解槽全体の貴金属の使用量ゼロを目指して開発を進めるとしている。また今後は、他社との協業も視野に入れ、製品化に向けた取り組みを推進する方針だ。
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