小売電気事業者に「3年度前の5割の供給力」を確保義務化へ 中長期取引市場の整備も第2回「電力システム改革検証制度設計WG」(1/3 ページ)

「電力システム改革の検証を踏まえた制度設計ワーキンググループ(WG)」の第2回会合で、小売電気事業者の新たな供給力確保の在り方と、中長期の電力取引を可能とする市場整備について事務局案が示された。

» 2025年07月10日 07時00分 公開
[スマートジャパン]

 2016年の電力小売全面自由化以降、小売電気事業者数は大きく増加し、多様な料金プランが提供されるなど、電力システム改革の目的の一つであった需要家の選択肢拡大は、一定程度実現したと評価される。他方、世界的な燃料価格の高騰により、小売電気事業者の退出や電気料金の高騰が生じるなどの課題も生じている。

 世界的なDXや脱炭素化の加速による電力需要の増加や地政学的リスクの高まり等を背景に、国は電力システム改革の検証を行い、2025年3月に「電力システム改革の検証結果と今後の方向性〜安定供給と脱炭素を両立する持続可能な電力システムの構築に向けて〜」を取りまとめた。

図1.これからの電力システムが目指すべき方向性 出典:電力システム改革の検証結果と今後の方向性

 この電力システム改革検証取りまとめにおいて小売事業については、「市場を通じた、安定的な価格での需要家への供給に向けた小売事業の環境整備」という方針が示されており、国は、市場環境整備と併せて、小売電気事業者の責任・役割とこれを実現するための規律の在り方について検討を行うこととしている。

 「電力システム改革の検証を踏まえた制度設計ワーキンググループ(WG)」第2回会合では、資源エネルギー庁から、小売電気事業者の新たな供給力確保の在り方と中長期の電力取引を可能とする市場整備について、事務局案が示された。

小売電気事業者による電力取引の現状

 日本卸電力取引所(JEPX)の取引量は、小売全面自由化当初(2016年4月)は総需要の約2%であったのに対し、2025年3月時点におけるJEPX取引量は総需要の35%程度まで増加している。また、直近の2025年1月〜3月におけるJEPXスポット市場の買い入札量は、旧一般電気事業者は404億kWh、新電力等は504億kWhに上る。

図2.電力需要に対するJEPX取引量の比率 出典:制度設計・監視専門会合

 シングルプライス方式かつ限界費用で取引が行われるスポット市場の約定価格は、燃料費や電力需給バランスの変動の影響を受けやすく、価格変動リスクが高い構造にある一方で、一般的に需要家の多くは電気料金の大幅な変動を望まないことが明らかとなっている。

 また近年、端境期や厳気象時の電力需給逼迫とこれに伴う節電要請も増加するなど、電力の安定供給確保の観点からも課題が生じており、小売電気事業者にも一層の安定供給確保のための対応が求められている。このため第7次エネルギー基本計画では、小売電気事業者の「量的な」供給力確保の在り方とその順守を促す仕組みを検討すると記された。

 なお、資源エネルギー庁によるアンケート調査(2023年2月時点のやや古い調査であることに留意)において、大手新電力(約8億kWh以上/年)では、契約期間が中長期(1年超)である電力調達量は、調査当時で約23%、今後の希望としては約38%という回答であり、より長期の契約期間による調達量を増やす意向が見受けられる。

図3.大手新電力 契約期間別電力調達量の「実績と希望」 出典:電力・ガス基本政策小委員会
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