富士経済がフィルム型ペロブスカイト太陽電池や軽量型結晶シリコンなど、軽量・フレキシブル性を備えた太陽電池の国内市場に関する調査結果を発表した。
富士経済は2025年8月27日、フィルム型ペロブスカイト太陽電池や軽量型結晶シリコン、有機薄膜といった軽量・フレキシブル性を備えた太陽電池の国内市場に関する調査結果を発表。同市場は2040年度に2024年度比で4.9倍の449億円になると予測している。
軽量型結晶シリコン太陽電池は商用化が先行しており、建物に後付けするBAPV(Building Attached Photovoltaics:建物据付型太陽光発電)として産業施設や住宅の屋根への設置が広がっている。こうした動きを背景に。軽量・フレキシブル太陽電池の2025年度の国内市場は、139億円が見込まれるとした。
従来の結晶シリコン太陽電池では設置不可能な耐荷重性能が低い既存施設への出荷を中心に、中長期的にもBAPV向けが大半を占めるとみられる。一方、自動車や移動体への応用製品を開発する企業もあり、試作・実証が進めば、2035年度頃には市場拡大につながる可能性があると予測している。
フィルム型ペロブスカイト太陽電池は、軽量かつ折り曲げられる製品が多く、さまざまな場所に設置可能という優位点がある。現状は、大学発ベンチャーやケミカル系メーカーなどを中心に参入が増加しているが、試験的な少量生産やサンプル出荷にとどまる。
現状、2030年度前後に建物の屋根や壁面、窓、電気自動車のルーフなどへ搭載を目指す研究・開発が進められており、2030年度頃に市場が本格化するとみられる。2030年度以降は、性能向上と量産技術の確立を両立することが求められるが、印刷技術を応用した「ロールtoロール方式」などの量産手法が整うことで長期的には市場が大きく拡大すると予想。2040年度は、BAPVが全体の用途の5割強程度を占める予測だが、垂直設置型やソーラーカーポートなどさまざまな用途も想定されるとした。
有機薄膜太陽電池は、軽量・薄膜・フレキシブルという特性に加え、吸収波長を適切にコントロールすることでさまざまな色のデバイスを生産できるなどの優位性がある。現在は、屋内向けの製品で一部商用事例がある。鉛など有機物質を含まない有機材料で生産されるため、モジュールが破損した際の安全性から、BAPVに加え、耕作とともに農地で発電を行う営農型を中心に2030年度頃から市場が本格化する見通し。長期的には、BAPVや、建材一体型であるBIPV(Building Integrated Photovoltaics:建材一体型太陽光)、営農型などの用途が市場拡大をけん引すると予想している。
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