海の植物等が吸収・固定する炭素を意味する「ブルーカーボン」。国土交通省の「地球温暖化防止に貢献するブルーカーボンの役割に関する検討会」は2025年8月、日本におけるブルーカーボンの算定手法やクレジットの活用方法などについて報告した。
カーボンニュートラルの実現に向けては、温室効果ガス(GHG)排出量の最大限の削減を前提として、CO2の吸収・固定の増進も不可欠と考えられている。陸上の植物が吸収・固定する炭素を「グリーンカーボン」と呼ぶのに対して、海の植物等が吸収・固定する炭素を「ブルーカーボン」と呼んでいる。
国連環境計画(UNEP)の報告書『ブルーカーボン』によれば、ブルーカーボン生態系の炭素貯留量は、陸上のすべての植物が貯留する炭素量に匹敵する規模である。
アマモ等の海草、ワカメや昆布等の海藻、塩性湿地・干潟、マングローブ林などの多様なブルーカーボン生態系の保全・回復は、CO2の吸収・固定だけでなく、生物多様性を通じた水質の保全や漁場環境の維持・改善、環境教育等の多面的価値を有することから、世界的にもその活用が進められている。
国土交通省の「地球温暖化防止に貢献するブルーカーボンの役割に関する検討会」は2025年8月、ブルーカーボン算定手法や、ブルーカーボン由来のカーボン・クレジットの活用状況等などを報告した。
日本において代表的なブルーカーボンは「海草」や「海藻」の藻場であり、国内にはアマモ等の海草類が約15〜20種、ワカメや昆布等の海藻類が約1,000種分布していると考えられている。ブルーカーボンのうち、日本ではマングローブ林の面積及び吸収量はわずかであるため、本稿では主に海草・海藻藻場を取り上げる。
「海草」とは、海中で花を咲かせ種子によって繁殖する種子植物であり、比較的浅い場所に多く、アマモ類の藻場はとくに「アマモ場」と呼ばれている。海底に地下茎を網の目のように張り巡らせることにより炭素を蓄積している。一方の「海藻」とは、胞子によって繁殖する藻類であり、葉の色によって緑藻・褐藻・紅藻に分けられる。
海草は砂泥の海底に生え、陸上の植物のように海底に張った根から栄養をとるのに対して、海藻の根は岩礁に体を固定するためのものであり、栄養は葉の部分で海水中からとるという違いがある。また、成長に必要な最低光量(海表面100%)は、アマモで18%であるのに対して、昆布では1.3%であるなど、海草のほうがより多くの光を必要とする。
国内の海草・海藻の藻場面積は、1990年には約33万haであったのに対して、現在は約16〜17万haと、半分程度に減少している。これに伴い、CO2吸収量も1990年の約52万t-CO2/年から現在は約35万t-CO2/年へと約3割減少しており、早急に藻場面積・吸収量の減少にブレーキを掛け、吸収量増加に反転させることが求められる。
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