以上のような蓄電池産業戦略の進捗状況や環境変化を踏まえ、新たに策定した「蓄電池・電源産業戦略」では、3つの柱は維持しながら、若干の目標変更を行っている。
今後の蓄電池市場の大宗を占める車載用、定置用に必要な製造能力確保を念頭に、2030年から2030年代半ばに蓄電池・部素材・製造装置の国内製造基盤150GWh/年(マザー工場)の確立を目指す。
従来の目標では「遅くとも2030年まで」としていた期限を、5年程度の後ろ倒しを行っている。
(中略)国内のマザー工場をベースに、多角的な競争力に優れる蓄電池を中心とする総合的な蓄電ソリューションを提供していく。
具体的には、2025年から2035年に、グローバル市場の規模が2倍に成長する見通しも踏まえて、蓄電池セルを製造する日本企業の蓄電池関連売上高(セル・パック・モジュール・蓄電システム等)を3倍に成長させることを目指す。
従来は、製造能力(グローバル市場600GWh/年)での目標としていたのに対して、新たな目標は金額(売上高1.7兆円程度→5兆円程度)で示された。
(中略)先進液系LIBや全固体電池を始めとし、我が国の技術の強みを発揮できる次世代電池で市場を獲得し、産業競争力強化・サプライチェーン強靱化に寄与することを目標とする。特に全固体電池については、2030年頃の本格実用化を目指すとともに、2030年代半ばに向けて需要規模に応じた製造基盤を確立し、海外も視野に入れて市場獲得を目指す。
従来の目標では言及されていなかった全固体電池の製造基盤の確立時期が、新たな目標では2030年代半ば、と明確化された。
これらの「目標」は製造・供給面を強く意識した内容であるが、蓄電池・電源産業戦略では従来の蓄電池産業戦略と同様に、市場創出や人材育成等の環境整備についても取り組みの方向性を示している。
蓄電池の需要先である電気自動車(BEV)等の普及には、充電インフラの整備が不可欠であり、国の「充電インフラ整備促進に向けた指針」では、2030年までに充電インフラ30万口の整備を目標としている。2026年3月末時点で10.6万口が整備済みと推計されており、今年度以降も同様のスピードで整備が進めば、目標達成は可能と考えられている。
また、安全性・信頼性は蓄電池の重要なテーマであり、車両用では改正「電動パワートレインに係る協定規則(UN-R100)」を踏まえた保安基準等の改正、定置用では「公共調達・重要インフラ向け蓄電池システムの安全ガイドライン」等が策定されている。
「戦略」では、2030年から2030年代半ばに国内で150GWh/年の電池工場を安定稼働させるために、蓄電池・電源システムのサプライチェーン全体で合計3万人の人材を育成・確保することを目指している。
産学協働による「バッテリー先進人材普及ネットワーク(BATON)」では、「関西蓄電池人材育成等コンソーシアム」で培ったモデルケースを他地域及び大学に展開しながら、サプライチェーン及びエコシステムを支える多様な人材を幅広く育成・確保できるよう、更に取り組みを発展させていく予定としている。
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