世界遺産のネーロイ・フィヨルドとフロム山岳鉄道山形豪のノルウェー紀行(2/2 ページ)

» 2011年10月13日 08時00分 公開
[山形豪,Business Media 誠]
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世界的にも有名な山岳鉄道「フロム鉄道」

 フロム鉄道は世界的にも有名な山岳鉄道の1つで、年間利用者50万人を超える鉄道ファンの憧れの的だ。もともとは、ベルゲン−オスロ間を走るベルゲン鉄道とソグネ・フィヨルドの船舶航路とを結ぶ目的で建設され、1940年に開通した。

ノルウェー紀行 始めは緑豊かでなだらかな斜面を登るフロム鉄道

ノルウェー紀行 落ち着いた雰囲気の車内
ノルウェー紀行 車窓から見える村。17世紀に建てられた木造の教会がある

 海抜2メートルのフロム村から、延長20.2キロという短い距離で高度差864メートルを登りきる。その間トンネルが20もあり、そのほとんどが機械を使わず手で掘られたというから驚きだ。

 あえてトンネルを多くしたのは雪崩や崖崩れによる被害を極力回避するためで、中にはヘアピンカーブを描くトンネルまである。「山岳鉄道」とはいうが、列車が上って行くのは所によって山ではなく絶壁である。

 最大斜度は55%。アプト式ではなく、6両の客車の前後にそれぞれ電気機関車を配置して運行するプッシュプル方式を採用している。フロムから終点ミュールダールまでの所要時間は約1時間だ。

ノルウェー紀行 崖の壁面に線路が二層になっているのが見える

ノルウェー紀行 ほとんど機械を使わずに掘ったというトンネル
ノルウェー紀行 ショス滝での写真タイム

 車内では、沿線の説明アナウンスを日本語でも流してくれる。また、途中にあるショス滝(Kjosfossen)で写真撮影のために列車を止めてくれるなど、観光客への配慮が随所に見られる。運行に必要な電力のすべてを近隣の水力発電所で作っているのも大きな特徴だ。環境先進国ノルウェーらしい取り組みだと感心させられる(あわせて読みたい「自然エネルギー大国のフィヨルドを行く」)。

ノルウェー紀行 雪景色のミュールダール付近

ノルウェー紀行 ベルゲン急行からフロム鉄道へと乗り換える人々
ノルウェー紀行 ミュールダールで貸し出している自転車

 緯度が高いためか、標高1000メートルにも満たない終点ミュールダール駅は森林限界の上にあり、取材したのは5月中旬だというのに、時折みぞれ混じりの雪すら降っていた。

 この駅にはオスロとベルゲンを結ぶベルゲン急行が停車するので、ここで乗り換える人が多い。フロム駅とミュールダール駅では、自転車の貸し出しを行っているので、ミュールダールからサイクリングでフロムまで下ることも可能だ。天気さえ良ければ、最高の景色が楽しめるだろう。ただし、逆方向はよっぽど体力に自信のある人でなければ無理だと思われる。

 鉄道ファンが見逃してはならないのが、フロム駅にある鉄道博物館だ。小さいながら、歴代の機関車や工事に使われた道具などが展示されていて、とても興味深い。ショップも併設されており、さまざまなグッズを販売している。

ノルウェー紀行 濃い緑色が特徴的なフロム鉄道の機関車
ノルウェー紀行 1944年に採用されたフロム鉄道初の電気機関車

ノルウェー紀行 フロム駅にある鉄道博物館とショップ

ノルウェー・イン・ナットシェル

 今回紹介したフィヨルドクルーズと、フロム鉄道を手軽に利用できるプランがフィヨルドツアーズ(Fjord Tours)から出ている。ノルウェー・イン・ナットシェル(Norway in a Nutshell)という周遊チケットがそれだ。

 例えば、ベルゲンを朝出発し、グドヴァンゲン〜フロムをフェリーで、そこからフロム鉄道でミュールダールまで行き、ベルゲン急行で戻るといったルート設定がある。オスロ発、ベルゲン着の片道ルートもあるので便利だ。

 また、この地域には珍しく、グドヴァンゲン〜フロム間のフェリー、フロム鉄道、共に通年運行しているので、冬場でも訪れることが可能だ。

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著者プロフィール

山形豪(やまがた ごう) 1974年、群馬県生まれ。少年時代を中米グアテマラ、西アフリカのブルキナファソ、トーゴで過ごす。国際基督教大学高校を卒業後、東アフリカのタンザニアに渡り自然写真を撮り始める。イギリス、イーストアングリア大学開発学部卒業。帰国後、フリーの写真家となる。以来、南部アフリカやインドで野生動物、風景、人物など多彩な被写体を追い続けながら、サファリツアーの撮影ガイドとしても活動している。オフィシャルサイトはGoYamagata.comこちら

【お知らせ】山形氏の新著として、地球の歩き方GemStoneシリーズから「南アフリカ自然紀行・野生動物とサファリの魅力」と題したガイドブックが出版されました。南アフリカの自然を紹介する、写真中心のビジュアルガイドです(ダイヤモンド社刊)


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