邦画各社の得意分野が強く出た、2012年の映画業界を総括映画ウラ事情

» 2013年01月07日 12時43分 公開
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「映画ウラ事情」とは:

総合エンタメサイト「クランクイン!」で連載中の、映画業界のウラ側や疑問を読み解く納得のコラム(※この記事は、クランクイン!より転載しています)。


 2012年の映画業界は、2011年の『ハリー・ポッターと死の秘宝 PART2』『パイレーツ・オブ・カリビアン/生命の泉』のような強い洋画がなく、12月末時点での年間興行収入ランキングでは、73億円の『BRAVE HEARTS 海猿』を筆頭に、『踊る大捜査線 THE FINAL 新たなる希望』『テルマエ・ロマエ』がそれぞれ59億円、『おおかみこどもの雨と雪』が42億円など、10位以内に邦画が7作品ランクインと、邦画の強さが圧倒的だった。

 また、最終的な興収は確定していないが、21世紀に入ってから日本映画のオープニング最高記録を樹立した『ONE PIECE FILM Z』、興収50億円突破は間違いない『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q』もランクインは確実で、根強いファンのいるアニメ映画の強さを証明した形となった。

映画ウラ事情 (C)2012 フジテレビジョン ROBOT ポニーキャニオン 東宝 小学館 エー・チーム FNS27社

単館系映画にヒットが生まれるものの、時代の流れに追いつけず

 では、このような状況を映画関係者はどう見ているのだろうか。

「2011年は震災の影響で、エンタメ自粛のようなムードが漂っており、世間的な空気もエンタメから少し離れていました。その反動からか、2012年はエンタメとしての映画が復権したように思います。特に東宝配給の邦画の好調ぶりは顕著で、ジブリ作品がなくても非常に強かった。安心・安定感に加え、チャレンジングな姿勢も引き続きで、映画界のリーディングカンパニーとして確固たる地位を築いています。さらに、角川のアニメ系コンテンツや、松竹の得意とする人情ものといった他配給会社の得意とする分野までシェアを伸ばしてきているので、その勢いにいかにして対抗していくかが、各社の課題になってくるのではないでしょうか」

 洋画に関しては、このような意見が。

「ジョニー・デップなどの大物スターの来日が増え、PRも頑張りましたが、興収50億円を越える大ヒット作が『ミッション:インポッシブル/ゴースト・プロトコル』(2011年12月16日公開)1本と、残念な結果でした。これは、劇場へ足を運ぶ絶対数が減っているのを止められず、映画というコンテンツのプライオリティが下がっている現状もありますが、絶対的憧れ的存在、夢の世界の人といった洋画のスーパースターが育っていないのも大きいでしょうね」

 そして、単館系映画『最強のふたり』が興収13億円を超えるヒットを記録する一方、シアターN渋谷、銀座シネパトスなどのミニシアターが続々閉館決定。

「現在、映画はフィルムではなく配信の時代。その配信用の機材が買えないために、映画館は苦境に立たされています。いくら時代の流れとはいえ、映画ファンにとっては寂しい限りです。2013年は……良くなると思いたいですが、やはり厳しいでしょうね」

 さまざまな映画ニュースが駆け巡り、邦高・洋低に終わった2012年。来年こそは洋画の巻き返しに期待したい。

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