キャビンはフロアとシートがブラウンやマロンカラーで統一され、南国の雰囲気がただよっている。搭乗したエアバスA330-200のビジネスクラスのシートは、横1列が2-2-2の6席でレイアウトされた最新のフルフラット型だ。離陸して水平飛行に移ると、ミールサービスが始まった。ビジネスクラスでは和と洋、そしてインドネシア料理の3種類のメニューが用意されている。私は食前酒に地ビールの「ビンタン」を、その後は赤ワインを注文して和食の牛すき焼きを堪能した。
食事を終えてしばらくすると、やがてキャビンに入国審査官が回ってきた。ここで、この報告のタイトルにも記したガルーダ・インドネシア航空だけのユニークな「機内入国審査サービス」について紹介しよう。
成田で搭乗手続きを終えたあと、隣のカウンターでインドネシア入国に必要な短期ビザを購入したことに最初に触れた。そのレシートを、搭乗機に同乗しているインドネシアの入国管理官が機内を回ってきたときにパスポートといっしょに提示する。世界でも唯一、ガルーダ・インドネシア航空だけしかやっていない、機内での入国審査サービスだ。
しかも同社は、このサービスをすべての国際線で導入しているわけではない。機内入国審査を実施しているのは、日本からの便(成田と関西)のほか、シドニー線やアムステルダム線のみ。審査が終わると、係官からそれを証明するオレンジ色のカードが渡される。ジャカルタ空港では時間帯によって他の国から到着した人たちがイミグレーションで列をつくっているが、その横のゲートでカードを提示すると長い列に並ぶことなく簡単に入国できるのだ。
シートを「ベッド」モードにしてくつろいでいたら、気が付くとGA885便は1万7000余りの島々が点在するインドネシアの上空にさしかかっていた。成田からジャカルタまではおよそ7時間半のフライトだ。空港到着は定刻の17時35分。腕時計の針を2時間巻き戻して、私たちは上陸に備えた。
作家/航空ジャーナリスト。東京都出身。学生時代に航空工学を専攻後、数回の海外生活を経て取材・文筆活動をスタート。世界の空を旅しながら各メディアにリポートやエッセイを発表するほか、テレビ・ラジオのコメンテーターとしても活動。
著書に『ボーイング787まるごと解説』『ボーイング777機長まるごと体験』『みんなが知りたい旅客機の疑問50』『もっと知りたい旅客機の疑問50』『みんなが知りたい空港の疑問50』『エアバスA380まるごと解説』(以上ソフトバンククリエイティブ/サイエンスアイ新書)、『新いますぐ飛行機に乗りたくなる本』(NNA)など。
Blog『雲の上の書斎から』は多くの旅行ファン、航空ファンのほかエアライン関係者やマスコミ関係者にも支持を集めている。
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