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コラム
» 2005年05月06日 17時00分 公開

第6回 コンテンツ論から見る「放送」と「通信」(1)誰がキラーコンテンツを“殺して”いるのか?

フジテレビとライブドアは和解に達したが、「放送と通信の融合」に向けた提携業務の推進はこれからの課題だ。コンテンツ・ビジネスという視点から見ると「放送」と「通信」のそれぞれの担う機能は今後どのようになっていくのだろうか。

[西山守,電通総研]

ニッポン放送問題と「コンテンツ」

 世間の話題を集めていたニッポン放送株買収劇は、フジテレビとライブドアが和解に達してほぼ決着し、日々のメディアで騒がれることも徐々に少なくなってきた。今回の一件は、企業の買収・合併(M&A)のあり方について様々な議論を巻き起こしたが、その一方で、メディア、コンテンツ・ビジネスに関しても様々な課題・問題点を浮き彫りにした。

 ライブドアの堀江社長は、フジテレビとの提携に関して「コンテンツ配信などで放送局と協業したい」と語っていた。ところが、和解後の4月23日付けの産経新聞での取材に対して、堀江社長は「コンテンツをネットで流そうなんて別に思っていない。著作権がそんなに面倒くさいんだったら、やりたくないですよ」と発言している。

「コンテンツ」における、放送局の2つの機能

 ネット上でのコンテンツ配信に関しては、著作権以外にも様々なビジネス上の課題がある。逆に、これまでの放送局のビジネスを見れば、その課題がより明確になるだろう。

 コンテンツに関して放送局が担っている機能を大きく分けると、下記の2点である。

1.良質なコンテンツを生産する機能

2.コンテンツを多くの人々(視聴者)に到達させ、世間の話題を喚起していく機能

 上の2つの要素は異なっているように見えて、実は不可分のものである。過去に論じてきたように、コンテンツの価値はその「質」のみによって決まるのではなく、「いかに社会的に話題になるか」、「いかに多くの人が見たい(聴きたい)と思うか」によって決まる。

 「良質なコンテンツを集めてくれば、おのずと客は集まってくるに違いない」という発想は、圧倒的に供給が不足していた時代ならば成立したかもしれない。しかしながら、現在のような供給過剰の時代には、コンテンツをいくら集めたところで、ユーザーはその存在に気づきさえしない、ということも往々にして起こりうる。さらに、ユーザーに魅力を感じさせ、「お金を払おう」という気持ちにさせるのは意外に難しいことである。

ブロードバンドによる映像配信サービスの多くがユーザー獲得に苦戦しているのは、こうしたことが要因として考えられる。

 重要なのは「いかにコンテンツの存在を人々に気付かせるのか」、「いかにコンテンツに関心を抱かせる(見たいと思わせる)のか」という点である。こうした点に関しては、いまだマスメディア(特にテレビ)に一日の長がある。

コンテンツにおける「放送・通信の融合」

 次回に詳しく述べたいが、コンテンツは「キラー化」した時点ですでに価格は高騰してしまっており、それを購入する側はなかなか美味しい思いをすることはできない。メディア・ビジネスにおいては「キラーコンテンツを集めること」ではなく、「コンテンツをキラー化する」ことこそに利益の源泉がある。

 現在、映像コンテンツ配信市場は急激な成長を遂げてはいるが、その市場規模はフジテレビ1社の売上高の10分の1に満たない(下図)。

図 *2004年は予想[「デジタルコンテンツ白書2004」(デジタルコンテンツ協会)、「会社四季報」(東洋経済)を元に電通総研作成]

 今後、フジテレビとライブドアは「放送・通信融合領域での業務提携に向け、ニッポン放送を含めた友好的な協議を開始する」という。

 コンテンツ・ビジネスにおいて、いかなる「放送と通信の融合」の形が考えられるのか。「放送」の持つ、多くの人(=マス)への到達力と話題喚起力を有効活用することができなければ「通信」は成功することはできない。一方で、「通信」と連動して「放送」側がいかに利益を上げていくのかに関しても、いまだ明確ではない。

 どのようなビジネスモデルがありうるのか、両社の今後の動きは、これまで以上に注目に値する。

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