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ゼロベースからの創造ITソリューションフロンティア:視点

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 仕事上、さまざまな企業の経営者や事業責任者の方とお話をさせていただく機会が多い。当たり前のことかもしれないが、事業に成功された起業家の方々のお話は非常に興味深く、示唆に富んでいる。また、新しいビジネスモデルを考える際のヒントや事業成功のカギなども、そこから拾い出すことができそうである。

 情報誌を発行する企業の事業責任者の方が、「うちは雑誌が売れ過ぎると利益が出ないのです」と言われたことがある。ふつうは、販売数量が増えれば1 冊あたりの製造原価が下がるため、売れれば売れるだけ利益が出る。しかし情報誌の場合は例外で、販売価格が元々原価割れをしており、その不足分を広告収入が補っているのである。そのため、発行部数がある限界を超えると、そのマイナス分が広告収入を上回ってしまい、利益がなくなる構造になっている。広告収入を確保するには情報誌の知名度を高める必要があるが、あまり売れ過ぎても利益は減殺される。情報誌のビジネスは、発行部数、広告料、知名度の適度なバランスが必要だと言えよう。

 また、昨年、あるソフト販売会社の経営者の方にお話をうかがった時のことであるが、「製品の発売時期は決まっているが何を販売するか考えているところです」と言われた。ちょうど阪神タイガースが18年ぶりの優勝を決めるか決めないかという頃であり、シリーズの終了まで残すところ3 カ月を切っていた。その会社では、自社の製品ユーザーと、あわせてタイガースファンに向けた新規商品を開発中ということであった。その後、タイガースは見事優勝し、その商品も爆発的に売れたそうである。この場合は、商品を起点にしてマーケティングを実施するという方式ではなく、身近な出来事のなかからヒット商品が生み出されている。いずれにせよ、環境の変化に敏感で、自社製品のユーザーをよく理解しているということが、どんな場合にも必要だということであろう。

 さて、昨今、情報技術の飛躍的な進歩、すなわちPCや携帯電話などの普及により、老若男女を問わず誰でもインターネットを身近に楽しむことができるようになってきている。また、ネットワークの高速化によって、音楽・映画・アニメやゲームなどさまざまなデジタルコンテンツも、インターネットを通じて気軽に入手できるようになっている。その結果として、従来からリアルの世界で営まれていた各種のビジネス(物販、チケット予約、金融、オークションなど)が、バーチャルの世界に予想を越える勢いで浸透し、消費者に受け入れられている。

 しかし、上述した2 つの事例はリアルの世界をインターネットのバーチャルの世界に移行したものではない。マーケットの動きや顧客のニーズを見事に融合させ、スピード感をもった新たなビジネスモデルを創造し、成功した事例であろう。

 また昨今では、従来のサプライヤー(商品・サービス提供)、サプライチェーン(卸・小売)、コンシューマー(最終消費者)という位置付け自体を見直したビジネスモデルも現れてきている。

 たとえば、あるメーカー系列のインターネット販売会社では、同業他社の類似製品も同じインターネットサイトで販売している。メーカー系列のサイトで、自社製品のラインアップがあるのなら、それのみを販売しようと考えがちである。しかし消費者の側からみれば、そのサイトの系列会社の製品であろうが他社の製品であろうが、多くの製品が並べて置かれているほうが便利に決まっている。実際そのサイトはユーザーに信頼され、ファンを増やすことができたという。社内には反対意見もあったと思われるが、インターネットサイトに連動する形で他の商品もさらに売上を伸ばし、この戦略は大成功を収めたということである。

 また、ある情報出版サービス会社では、有料であった情報サービスを無料にしてしまった。お話をうかがった事業責任者の方は「クビになるかと思いました」と苦笑されていた。この会社では、従来は有料で情報誌を販売していたが、その情報をインターネットで一般消費者に無料で公開することにした。その代わりに、バナー広告料やアフィリエート料(広告サイトにユーザーがアクセスした場合に支払われる広告主からの成功報酬)、また法人顧客への新たな情報販売方法の開拓などによって、従来以上の収益を確保できるようになったという。従来のビジネススキームにとらわれず、新たなビジネスモデルによって成功した例である。

 以上に紹介した事例は、従来のリアルの延長線上で商品開発やサービス開発を行うビジネスモデルではない。サプライヤー、サプライチェーン、コンシューマーを、従来と全く違う視点で見直すことにより、またそれによって新たなマーケットをも作り出すことにより、ビジネスモデルが再構築されているのである。そこでは、全員がサプライヤーにもコンシューマーにもなり得るし、さらにサプライヤーとコンシューマーの立場が逆転する可能性もあり得る。重要なのは、商品やサービスに対して対価を払う気になる人がいるということであり、それは誰であってもよいのである。

 「創造」とは、それまでなかったものを初めて作り出すことであるとすれば、ここで紹介した4 つの事例は、現状の延長線の次元での単なる発想や視点の転換ではなく、まさに「ゼロベースからの創造」を実現したものと言うことができる。

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