小寺信良
HDMIで揺れるハイビジョンテレビの難題(4/4 ページ)
最近世間をにぎわせている次世代DVDでは、市販コンテンツがHDMIでしかHD再生できないのでは? という懸念が広がっている。まだ決定したわけではないようだが、仮にそうなったとしたら、ソフトが出る来年には、ほとんどのハイビジョンテレビが時代遅れになってしまう。昨年夏のアテネオリンピックに合わせて、D端子しかない大画面テレビを無理して買った人も多いことだろう。それが今さら「えー実はこれからHDMIしかできないことがいろいろありまして……」などと言われても、そうそう納得できるだろうか。
アナログのD端子でもデジタル放送同様に出力可能するか、あるいはどうしても著作権保護技術が必要というのであれば、HDMIオンリーになるまでに数年の猶予を与えて段階的に移行するなどの手段は必要だろう。
あるいはアナログの保護技術を開発し、ハードウェアの追加が必要ならば既存のハイビジョンテレビユーザーに対して無償でアップデートするというのが、今までハイビジョンが見られますよと言ってテレビを売ってきた家電メーカーの「責任」とまでは言わないが、仁義はあるのではないか。
問題の本質はどこにある
この問題は、メーカーだけを責められない。誰だって好きこのんで、こんなめんどくさい事態に巻き込まれたくはないのである。結局のところ、HDCPがなければ絶対にHDコンテンツを再生させないというコンテンツホルダー側の強硬な態度が、こういった事態を引き起こすという言い方もできる。
今のところHDMIには、市販DVDがアップコンバートして表示できるぐらいの機能差しかないが、この機能にしてもそれほどまでに守らなければならない線なのか、という疑問がある。すでに手持ちのSDコンテンツを可能なかぎり高解像度で見てみたいという欲求は、ユーザー側にしてみればしごく自然なものだ。
もともと、このアップコン技術は、SDの解像度しかないものが、まるでハイビジョンそのもののような解像度に大変身する魔法ではないのである。しかもそれがアナログで流れたからといって、放送機材でさえそれを記録するのは相当めんどくさい。
ましてや一般人に、アナログコンポーネントのHD信号をそれに見合う解像度でカジュアルにキャプチャーする手段など、ありはしないのである。技術的に根拠のない恐怖心だけで、さまざまな制限を盲信的に科しているとしたら、こんな馬鹿げた話はない。
この手の決まり事は、どうしてもマーケットがデカい米国主導で話が決まりがちだ。だが現時点でこれでワリを食うのは、HDMIの普及が遅れた米国以外の消費者だけなのである。
映像マーケットの広がりを考えれば、なんでもギチギチに固めればいいというものでもないだろう。日本も含めたアジア市場に多少なりとも注目するのであれば、「過ぎたるは及ばざるがごとし」「水清ければ魚棲まず」あたりの思想で、なんとかうまいことできないものだろうか。
小寺信良氏は映像系エンジニア/アナリスト。テレビ番組の編集者としてバラエティ、報道、コマーシャルなどを手がけたのち、CGアーティストとして独立。そのユニークな文章と鋭いツッコミが人気を博し、さまざまな媒体で執筆活動を行っている。
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