コラム
» 2006年11月17日 18時00分 UPDATE

ネットベンチャー3.0【第16回】「日の丸検索エンジン」は何を狙っているのか(上) (1/2)

佐々木俊尚氏が日本のベンチャーにおけるWeb2.0ビジネス最前線を描く連載企画。経産省肝いりの「日の丸検索エンジン」プロジェクトが、過去と同様の無駄遣いだと叩かれている。しかしどうやら筋は悪くなさそうだ。

[佐々木俊尚,ITmedia]

叩かれる一方の経産省「情報大航海」プロジェクト

 経済産業省が肝いりで立ち上げた「情報大航海」というプロジェクトが、強い批判を浴びている。「情報大航海」というのは、グーグルやヤフーに対抗して日本でも情報解析のシステムを作っていこうという官民共同の大プロジェクトだ。国家予算300億円を投入し、3年後には実用化しようという計画である(→関連記事参照)

 たとえば大前研一氏は、日経BP社のサイトのコラム「『産業突然死』の時代の人生論」の第36回“鉄は国家なり”のやり方から抜け出せない国の経済政策で、次のように批判した。

 先端技術はどうだろう。ロボットや次世代自動車が挙げられているが、これは国が余計な手助けをしなくても、民間の力だけで十分に伸びていく分野だ。IT 産業も「コンテンツ市場を5兆円に拡大」とあるが、ゲーム分野では日本はすでにトップの地位を保っているのだ。今さらという感じが否めない。

 そもそもトップでない分野をトップにしようと思っても、日本政府では逆立ちしても無理というものだ。以前、(時価総額が10兆円という)グーグル対抗の検索エンジンを日本で作るといって数十億かける、という経産省のドンキホーテ的シナリオがリリースされたが、あれはいったいどうなったのだろう。

 またブログ「プロダクトマネジメントとイノベーション」でも、国産検索エンジンプロジェクトの迷走(シグマへの道)というエントリーで、以下のように書かれている。

国産検索エンジンというのは、経産省(IPA)予算でITベンダなどを集めて、Googleに対抗できる国産の検索エンジンを作ろうではないか、という国家プロジェクトである。 そもそも、IT系ジャーナリストが華々しく報道していること自体、不思議だ・・・。

(中略)

世界有数のベンチャーファンドともいえる経産省予算を、超先端的なイノベーションをどんどん仕掛けることに使うことには賛成だ。しかし、その受託先がリスクの負えない大手の私企業というのはまったくナンセンスである。

20年前、当時の通産省が250億円の税金を費やしてオープンソースOS・共通UNIXマシンを作ろうとして大失敗したシグマプロジェクトがある。 またもや同じ繰り返しである。

 数え上げれば、きりがない。池田信夫氏も、ご自身のブログでこう書かれている

今週の『サンデー毎日』にも「国策検索エンジンは300億円をドブに捨てる!?」という記事が出ているが、当事者以外から肯定的な評価はまったくない。「日の丸検索エンジン」が成功する可能性は、客観的にみてゼロに近いと思われるが、むしろ興味あるのは、そういう失敗がなぜ繰り返されるのかという問題である。

失敗続きの官民共同ITプロジェクトの轍を踏む?

 こうした危惧はその通りで、経産省は過去に巨大プロジェクトを仕掛けては、そのたびに大失敗を繰り返してきた。

 たとえば1982年、当時の通産省は人工知能を開発しようと第5世代コンピュータ計画を立ち上げ、予算を570億円も注ぎ込んだが、結果的にまともな成果は上げられなかった。並列推論のマシンは開発したものの、それを使って実際に人工知能を作り上げるようなアプリケーションを生み出すことはできず、これまでのコンピュータの枠組みを突破させるという目論見については結果として失敗に終わったのだった。また1985年には、ソフト技術者の不足に対応するというお題目で、ソフト開発のネットワークを構築する「シグマプロジェクト」を実施し、やはり国家予算250億円を投じたものの、オープンとは言い難いネットワークを目指した結果、大手ITベンダーの主導権争いの中に沈没していくように失敗してしまった。

 官民共同の巨大プロジェクトはうまくいかない、というのが今やIT業界の常識になってしまっているのだ。おそらくその背景には、「経産省の官僚は、コンピュータの世界の進化やオープンアーキテクチャ化の意味をわかっていないのではないか」というIT業界からの根強い不信感がある。戦後の日本を支えた重厚長大産業的なフレームワークが、経産官僚のDNAになってしまっているというわけだ。

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