コラム
» 2007年08月07日 08時00分 UPDATE

金融・経済コラム:USENに次の一手はあるのか?

USENの宇野社長が、フジテレビが保有するライブドア株式すべてを95億円で取得してから1年5カ月、これといった成果のないまま全数を売却すると発表しました。なぜ突然売却なのかその理由を考えてみました。

[保田隆明,ITmedia]

宇野社長がライブドア株式を売却

 USENの宇野社長が、個人で保有するライブドア株式の全てを手放すことにしたとの発表がありました。宇野社長がライブドアの株式を取得したのは2006年の3月。株式を取得した段階では、ライブドアとUSENの本格的な事業提携への布石かと期待されましたが、結局大した果実を生み出すことなく株式の売却となりました。

ライブドア株式取得後の不可解な動き

 いつ、ライブドア株式の追加取得を行うのかと思っていたら、その4カ月後の7月にはライブドアではなく、かつて宇野社長が共同経営者として立ち上げたインテリジェンスを子会社化すると発表しました。宇野社長は300億円の個人マネーをつぎ込んでUSENの株式を引き受けます。そして、そのお金を使ってUSENはインテリジェンスを買収したわけですが、同じ300億円を使うのであれば、なぜライブドアの株式の追加取得を検討しなかったのかという疑問が沸きます。インテリジェンスは収益を生み出していましたので、損益計算書へのインパクトという意味ではインテリジェンスの子会社は理解できなくありませんが、事業上のシナジーという観点では明らかにライブドアとの方が実が多かったはず(ただ、ライブドア株主の投資ファンドは売ってくれなかったでしょうが)。

 その後、USENは会計監査人と決算内容についてもめ、最終的には会計監査人が変更となる(会社側発表では監査人の任期満了がその理由)など、株主や関係者にとっては穏やかではないニュースが続き、今では、買収と売却によりグループ会社の選択と集中を進めています。

何のためにお金が必要?

 そんな中出てきた今回の宇野社長のライブドア株式の売却。ライブドアホールディングス株式の半分は外資系の投資ファンドに握られていますので、最終的には事業をドンドンと売却せざるを得ない状況です。宇野社長が今、持分を慌てて売らなくとも、最終的に株式の売却の機会はやってくるはずであり、そのときの方が売却利益が大きくなる可能性もあります。見方を変えると、宇野社長にライブドア株式を売却してお金を作る必要性がなければ、わざわざ今回売る必要はなかったのではと思います。

 USENは2007年5月にはゴールドマン・サックス証券の関連会社に対して250億円の増資を行い、一部は借入金の返済に充てるなど、会社の資金状況は決して潤沢ではありませんので、宇野社長がお金を作った理由として考えられるのは、USENで何らかの投資案件が発生し、投資用のお金を調達するためにまた宇野社長が個人マネーで増資を引き受けるということかと思われます。これを実施すると、ゴールドマンへの増資後に下がってしまった宇野社長の持分を再び上げることもできます。

 映像、コンテンツ関連の事業強化を謳う同社ですが、果たして、次にはどんな投資を行い、本業強化につなげるのでしょうか。今の同社の損益計算書を見ると人材事業への依存度が大きく、いったい何の会社なのか株主も大いに迷うことだと思われます。

宇野社長による失望売りの可能性も?

 もし、今回のライブドア株式売却後も、USENにて何らかの投資も発表されない場合は、宇野社長による単なる失望売りの可能性もあります。それは、「堀江時代のライブドアが今も健在なら、YouTubeのそっくりさんやSecond Lifeのそっくりさんを作りそうな気がする(関連記事参照)」との意見にあるように、宇野社長がライブドア株式取得時に期待していたのは、まさにそういうDNAだったのかもしれないということです。「ライブドアがYouTubeやニコニコ動画をまねたサービスを作ってくれれば」そう思いながらもニフティに「ニフニフ動画」なんてやられてしまったのを見るにつけ、もう耐えられん、そう思っての株式売却だったかもしれないですね。

関連キーワード

| ライブドア | USEN


保田隆明氏のプロフィール

リーマン・ブラザーズ証券、UBS証券にてM&Aアドバイザリー、資金調達案件を担当。2004年春にソーシャルネットワーキングサイト運営会社を起業。同事業譲渡後、ベンチャーキャピタル業に従事。2006年1月よりワクワク経済研究所LLP代表パートナー。現在は、テレビなど各種メディアで株式・経済・金融に関するコメンテーターとして活動。著書:『図解 株式市場とM&A』(翔泳社)、『恋する株式投資入門』(青春出版社)、『投資事業組合とは何か』(共著:ダイヤモンド社)、『投資銀行青春白書』(ダイヤモンド社)、『OL涼子の株式ダイアリー―恋もストップ高!』(共著:幻冬舎)、『口コミ2.0〜正直マーケティングのすすめ〜』(共著:明日香出版社)、『M&A時代 企業価値のホントの考え方』(共著:ダイヤモンド社)『なぜ株式投資はもうからないのか』(ソフトバンク新書)。ブログはhttp://wkwk.tv/chou/


Copyright© 2016 ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

Loading

ピックアップコンテンツ

- PR -

マーケット解説

- PR -